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クチコミ
その小さな島は、スペインのイビサ島から船で行ったところにひっそりたたずんでいる。夜ごと巨大クラブで盛り上がるパーティアイランド、イビサ島の賑やかさとは裏腹に、その小さな島には、手つかずの自然と美しいビーチが静かに広がっているという。
島の名前はフォルメンテーラ島。トム・フォードがそのビーチの美しさに感銘を受け、コスタ・アジューラ(碧の海岸)オード・パルファムのイメージを思い描いた地。
トム・フォードがプライベートブレンドの好反応を受けて、特に人気の高いネロリ・ポルトフィーノを中心にすえたシリーズを展開、その中の1本としてこのコスタ・アジューラを発売したのは2014年。調香は、ル・ラボやマーク・ジェイコブスで作品を手掛けているヤン・ヴァズニエ。テーマは、ネロリ・ポルトフィーノ同様、避暑地のバカンスの香り。
では、その香りはというと。
コスタ・アジューラを1プッシュすると、一瞬、清涼感あるシトラスの風に乗って、乾いた甲高い木の香りが漂ってくる。スパイシー&ドライ。クレジットにはドリフト・ウッド(流木)とあるが、流木からエッセンシャルオイルを抽出したとは思えない。香料のイメージだろう。わずかなウードの暗さやベチバー系の茶色い雰囲気をもった複雑なウッディがトップから香る。ノワール・デ・ノワールほど暗くはない。
5分とせずシャープなラベンダーの香り、そしてこんもりとしたシー・ウィード(海藻)の海っぽい香りに落ち着く。これがこのコスタ・アジューラの香りの一番の特徴。寒天を作る時の匂いのような、あるいは、ところてんに鼻を近づけたときのような、ややムワリとした海藻系の匂いが強く主張してくる。海藻系といえば、ポロスポーツに使われていたモワッとした香料がインパクト強かったけれど、こちらは穏やかでまだ好感がもてる。さながら、波の形に海藻が散らばった波打際を散策しているときのような雰囲気。相変わらずジワジワと響くカルダモン系のスパイシーさは、この海藻系の香りのエッジを引き締めているかのよう。そしてその背後には、ラベンダーやヨモギ系のグリーンな香りもしている。約3時間ほど、この海藻&スパイス&ハーバルな香りが漂い、ラストはスパイスとウッディ系の香りの引き波を残しながらフェードアウトする。
全体に、メインが海藻の香りとカルダモン系スパイスであること、そこにウッディ系の茶色い香りが重なり、ラベンダーなどのグリーン香もしているというイメージだ。ボトルは深く美しいブルーで所有欲を満たしてくれるものの、香りじたいはかなりマニッシュで、女性には付けにくいタイプかもしれない。特に、トップからラストまでスパイシーで、鼻がムズムズするような感じが終始漂っている点が、好きかどうかの分かれ目になるかと思う。
高温多湿の日本の夏には、こうしたホットスパイス系ウッディは暑苦しさが増すのでなかなか使いづらいかも知れない。秋冬に夏を思い出して使うのが似合う気がする。レイヤーするなら、ネロリ・ポルトフィーノやフルール、マンダリーノなどの同シリーズ系が無難。夏使用なら甘さと冷たさをプラスしたいので、ジョー・マローンのフルーティー系、フローラル系を合わせるのもいいと思う。
海藻の香りは、きらきらと明滅する透明な海の雰囲気満点だし、ハーブの香りも海岸沿いに生えた植物のグリーンな風を思わせて心地よい。じわりと香るスパイスは、さながら地中海の燃えさかる太陽のよう。じりじりと照りつけるまばゆい光、その熱と火照った体のしお辛さを思わせる香り。今から20年ほど前、マリン系やアクア系と呼ばれる香水のブームがあったけれど、これはかつての瓜系とは似て非なる香りだ。トム・フォードが作ったのは、大人のビター・スパイシー・マリンと言うべき部類の香り。
フォルメンテーラ島で最も美しいと言われるプラヤ・イレテスは、透明度の高いクリアブルーの海水が1km先まで続く楽園のようなビーチだ。引き潮時には、海の中に狭い砂州が現れ、北側にある小さなエスパルマドール島まで陸続きになるという。
海に現れた白い砂の道を歩き、対岸の島へと行く。じりじりと灼けつく陽射し。キラキラ光るダイヤモンドのような波のゆらめき。火照った体から立ち上る潮の匂い。ここは終わりなき夏の楽園。熱い海風が吹き抜けるコスタ・アジューラ。
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