ディオール / ディオール オム オードゥ トワレ 口コミ

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doggyhonzawaさん
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6購入品

2017/3/11 20:14:22

「ココアの香りのフレグランスがある。」人づてにそう聞いたのが、ディオールオム・オードトワレと出会うきっかけだった。

曇天と乾いた空気、冷たい雨や雪が心に灰色の影を落とす冬。そんな季節は、なぜかチョコレートやココアの香りが恋しくなる。心と体を困憊させるようなハードな仕事が続くとき、吐息を漏らす代わりに、ひとかけらのチョコレートをパキッとかじる。不意に口の中に広がるやさしい甘さと香ばしいカカオの風味。その瞬間の安らぎ。上質なココアがカップに注がれるとき、湯気と共に立ちのぼる温かな香り。ほっと一息つくひととき。

「ディオールオムは、ココアの香りがする。」結論から言うと、その噂の真偽は、当たらずとも遠からずといったところだ。ディオールオムは、ココアの香りというよりも、パウダリーな白いアイリスの香りが印象的なフレグランスだ。ただ、その下から甘くてビターな、ココア風と言えばそんな風味の香りがする。それは、カカオ香料の香りだ。そして、このアイリスとカカオの2つが、白と茶色の絶妙なコントラストを見せる美しいフレグランス、それがディオールオムだ。

このトワレは、2005年、オリヴィエ・ポルジュによって作られ、メタルシリンダーボトルで発売された。現在、シャネルの専属調香師である彼の才能をいち早く見い出していたエディ・スリマンのセンスには、今さらながら脱帽する。現在の黒シリンダーボトルは、フランソワ・ドゥマシーによってリファインされたもの。全体に、過剰投与されたアイリスの加減をやや調整した構成に変化したようだ。このレビューも現行品のもの。

そんなディオールオムのトップは、まず暗くて低いアイリスの香りから始まる。くすんだ漆黒の苦み、アイリス特有の内省的な暗さだ。そこにパチュリの墨のような香り、ヴェチバーの土っぽさが主張してくる。ややシダーにも似たウッディのような香りも。それでも、全体的にスッキリしていて心地よいオープニング。

3分後、わずかにシャープなラベンダーのアロマが感じられるようになる。本来のトップの香りはここかも知れない。最初のウッディからは香りが丸くなる。そして引き続き、アイリスの香りが続く。それがやがて、白く粉っぽく変化していくことを感じさせる予兆。

やがてわずかな甘さを伴って、暗かったアイリスが、白いパウダリーな香りに変わってくる。このミドルのアイリス香のコンポジションがとても心地いい。そして、そのドライでまろやかなパウダー香の下から、ほんのりビターな茶色の香りが広がってくることを感じる。それは、コクのあるカカオの香りとパチュリのコンボ。ときに、ビターショコラやココアパウダーの香りを彷彿させるような。

アイリスの熟成パウダー香とカカオ風味の割合は、7:3くらい。メンズの香りにありがちなラベンダーやウッディの重厚感、鼻につくスパイスのような感じがほとんどなく、ミドルは柔らかく上質な白粉系のフローラル香がメイン。ただ、人によりカカオ&パチュリの出方は異なるだろう。それこそ、チョコレート風味に出るか、ココアっぽくなるか、メンズっぽい苦みのあるウッディが出るか。それはやはり、自分の肌にのせて試してみるしかない。

このミドルが好きなら、ディオールオムは買いだ。なぜなら、ディオールオムは、この穏やかなパウダリーアイリスが、8時間以上も続くからだ。ラストとの境界は明瞭ではないものの、気が付くと、香り全体がさらに明るくなっていて、輝きを増した温かなムスキーで消失する。わずかにカカオやアンバーっぽい甘い香りをともないながら。

20代後半以上の男性や、シャープな身のこなし、穏やかながらも心に熱い思いを秘めた方などによく似合うと思う。同時に、女性っぽいフローラルに飽きた方、シャリマーの亜流みたいなオリエンタルに飽きた女性にも、このビターなアイリスの香りは好まれやすいようだ。同ディオールのボア・ダルジャンが好きな方にはかなりおすすめだ。

ディオールオムの前半は、暗い冬を思わせるアイリス&ココア。けれど、後半は、春のまばゆい日差しの中、コートを脱いで、軽やかな足取りで街を歩き始めるような明るいフローラルムスクに変わる。だんだんに明度と温度が増していくこの香りは、新しい季節を迎えて気分を上げていく、今のような時期にふさわしい香りかも知れない。

三寒四温。冬から春へ変わる頃、季節は行きつ戻りつしながら少しずつ進む。人の心もまた、同じように上がり下がりを繰り返して、少しずつ柔らかさとぬくもりを取り戻すのだろう。春の風に吹かれて洗われて。

美しいアイリスの白と、香ばしいカカオのブラウンカラーに彩られたミルクココアのコントラスト。ディオールオムに込められたのは、そんなひとときの安らぎと温かさ。

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  • ディオールオム オードトワレ by doggyhonzawaさん
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