コスメを通じ、地球に共存するすべてをハッピーに!
「化粧品ビジネスを通じ、さまざまな社会問題を根本から解決したい。そして動物も人も環境も、地球に共存するすべてをハッピーにしたい。
『ラッシュ』はこうした想いのもと、1995年に誕生しました。SDGsが採択されたいま、私たちの活動に共鳴してくださる仲間が増えたような感覚です」(小山さん)
「ラッシュ」の取り組みとして象徴的なのが、商品を梱包せず、裸のまま販売するネイキッドアイテム。「あっ、近くにラッシュのお店がありそう!」と思わせる、あの甘く華やかな香りの理由も、商品の多くが裸のまま陳列されているから。
「ネイキッドアイテムを選んでいただくことは、ゴミの削減につながるのと同時に、お客様にもうれしいポイントがあります。裸の状態での販売を可能にするために固形化商品の開発を進めていますが、固形のコスメは水を使用しないため、合成保存料を添加せずに済むので、原材料の効果をそのまま感じられます」(小山さん)
コスメの劣化を招くバクテリアは、水の中で繁殖します。しかし水分を含まない固形にすることで、バクテリアが繁殖しづらい環境を作り、劣化を防げるというメカニズム。
さらに「固形のコスメを作るためには、製造段階からできる限り水分量を抑える必要があるので、水資源を守ることにもつながるんですよ!」と小山さん。
きらきらと輝くラメやグリッターに潜んだ人権侵害
ゴミを削減すること、水資源を守ること。どちらもSDGsの項目に直結しますが、SDGsが掲げるゴールは環境保全だけではありません。
人々の人権を守ることも、達成すべき大事な目標です。
ラメやグリッターの原材料として、「ラッシュ」が過去に使用していたのが天然マイカ。
地球にやさしい自然素材でしたが、2018年を境に天然マイカの使用を中止したのだそう。その理由こそ、人権保護なのです。
「天然マイカは自然界に存在する鉱物ですが、採掘の過程に児童労働が起きていないという保証ができなくなりました。子どもを不当に働かせることは、明らかな人権侵害です。
そこで『ラッシュ』では、天然マイカの使用を取りやめ、現在は合成マイカを使用しています。合成というと人工的に聞こえますが、複数の天然鉱物をミックスした、地球にやさしい素材です」(小山さん)
きらきらと輝くラメやグリッターに隠された人権問題。「ラッシュ」の輝くコスメは、環境にも人権にも配慮されているのです。
「ラッシュ」は誰もが安心して、自分らしくいられる場所
「ラッシュ」の活動はコスメの開発だけにとどまりません。ユーザーを巻き込んだキャンペーンも特徴のひとつです。
いまでこそ、社会に浸透しつつあるジェンダー平等に対する取り組みも、「ラッシュ」は2013年から本格的にスタートさせています。
「『ラッシュ』には『All Are Welcome, always.(常にすべての人を受け入れる)』という方針があります。マイノリティもマジョリティもすべての人を受け入れ、誰もが安心して、自分らしく暮らせる社会を築きたい。でも、周囲の偏見に苦しみ、LGBTQをカミングアウトできない人たちが多くいます」(小山さん)
そこで「ラッシュ」が2015年1、2月におこなったのが「WE BELIEVE IN LOVE - LGBT支援宣言」キャンペーン。セクシャルマイノリティの存在認知と支援の拡大を目的に、オフライン・オンライン双方の取り組みをおこなったとのこと。
とくに実店舗には支援を宣言するためのボードを設置。多くの人たちが訪れたそうです。
「このキャンペーンでとくに印象的だったのが、あるお客様の『家族にも友だちにも言えずにいたけれど、『ラッシュ』のお店に来て初めて、安心してカミングアウトできた』というお言葉です。『ラッシュ』という店舗が当事者の方にとって安心できるコミュニティの場になれた気がしました」(小山さん)
コスメのネーミングが誰かの安心を脅かしてはいけない
世界的なムーヴメントとなった「Black Lives Matter(BLM)」の社会問題をきっかけに、全世界のラッシュでダイバーシティ&インクルージョンの取り組みをこれまで以上に本格的に実行したひとつとして、商品すべてのネーミングを再検討。
「『ラッシュ』の商品のネーミングが、誰かの安心を脅かしたり、不快な気持ちにさせてはいけません。性別や人種に年齢、多様なライフスタイルへの配慮が十分にされているかをレビューし直し、約600ある全商品のうち、現時点では11アイテムの名称変更を決めました」(小山さん)
そして「ラッシュ」が、今回の取材を実施した2021年3月におこなったキャンペーンのテーマは、難民問題です。
現在、日本における難民申請には回数制限がありません。しかしこれを2回までに制限し、3回目以降の難民申請者は原則的に強制送還する入管法改正案が提出され、国会での審議が始まろうとしています。
「死と隣り合わせのような状況から逃れるため、やむを得ず、祖国を出たのが難民の人たちです。その難民を祖国に送還するということは、迫害を受けたり、命の危険に関わる可能性があることを意味します。しかも日本は、難民を守るための難民条約に加盟しています。それなのにこの法改正は、絶対にあってはいけません」(小山さん)
「ラッシュ」は法改正に反対する難民支援協会に賛同し、2021年3月15日(月)にはTwitterを用いた「#難民の送還ではなく保護を」キャンペーンを実施。このハッシュタグをチェックすることで法改正の問題点を知ることができるのと同時に、ハッシュタグの使用が法改正反対への意思表示になります。
店頭スタッフは社会問題をやさしく伝える伝道師!
環境問題も人権問題も、どこかとっつきにくく感じる人は少なくないはず。それが「ラッシュ」の商品を選ぶだけで問題解決に寄与することができます。
そして、そこからもう一歩踏み出すには、どうすればよいのでしょう?
「まずは『ラッシュ』の店舗に遊びにきてください。難しい社会問題の話題でも大切なのは、社会で何が起こっているかを知ること。『ラッシュ』の店頭スタッフはフレンドリーでおしゃべり好きばかり(笑)。ラッシュの商品を通じ、いまある社会問題について、知識の範囲内でいろいろな話題をお伝えできます」(小山さん)
最後に「ラッシュ」の店頭を訪れ、「ラッシュ」の商品を選びたくなる情報をもうひとつ!
「ラッシュ」では使用済み容器のリサイクルのため、空容器の回収をおこなっています。使用後の空容器を洗っていただき、店頭に5個持ち込むと、フェイスマスク1個と交換できるうれしい仕組みです。
そして、街中で気づくたびに心が弾み、なんだかハッピーになれるラッシュの香り。その香りの裏側にある「ラッシュ」の取り組みを知っただけで、SDGsが少し身近に感じられたのではないでしょうか。
取材・文/大谷享子
(アットコスメ編集部)