美容業界で働く人の日常に隠された“もう一つの人生ドラマ”『美容部員のリアル ~20代編~ part1』

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仕事には“自分自身”が色濃く反映されているもの。どうしてその仕事に辿り着いたのか? 仕事をしながらどんな日常を過ごして、どんなことに幸せを感じているのか? そして今後どう生きていくのか? 本連載は「美容部員」として働く人々にフォーカスし、その人生ストーリーに迫ります。

プロフィール

現在21歳のA子さんは山口県防府市出身。高校卒業後は地元山口県でアパレルのショップ店員として3年間働く。その後、家を早く出たいという気持ちと、美容系の仕事に就きたいという気持ちから上京を決心し、資金を貯めることに。自動車工場で半年間働いて貯めたお金は150万。それを元手に2018年10月から東京でひとり暮らしを開始。@cosmeキャリアの転職サポートを通じて11月から念願の美容部員として現在働いている。

自動車工場で半年間働いて、150万円もの上京資金を貯める

———もともと美容業界で働きたいという気持ちがあったとのことですが、そのあたりの経緯を詳しくお聞かせいただけますか?

「美容業界への興味は元をたどると、叔母がエステティックサロンを経営していて、小さい頃から手伝いをしていた経験が関係しています。そこで子供ながらにもインパクトがあったのが、キレイになって喜んで帰っていくお客さまの姿でした。本当は、卒業後に美容の専門学校に行きたかったんですけど、親に経済的に苦しいからダメだと言われて…。それで働くことにしたのですが、山口県には美容関係の求人が少なくて、とりあえずファッション業界に就職しました。

でも3年働いてやはり美容業界で働きたいと思うようになって…。ファッションも人をキレイにするという意味では同じ。私自身も洋服は大好きなのですが、肌や顔など“よりその人自身”をキレイにする役割を担いたいなという気持ちが芽生えたんです。もともとコスメ好きで、デパートのカウンターに通っていたこともあり、美容部員という仕事に興味を持ちました」

———それで自動車工場で半年間働いて、150万円もの上京資金を貯めたということですね。年齢的には遊び盛り…。働きづめの生活は辛かったのでは?と思ったのですが。

「それが、あまり辛かったという実感がないんです。確かに、上京資金を貯めるという目的だったので、お金が良いという理由で選んだお仕事。そのぶん、仕事内容は男性と同じ作業をする“力仕事”でした。具体的には自動車工場のラインで車の内部に入って次々と部品を設置していくような作業です。重労働ですが、ラインが止まると大変なので少しでも作業が遅れることは許されません。でも周りの方にサポートいただいて無事にやりきることができました。

それと、私は友達とあまり外に遊びに行くような性格じゃなかったんです。家の中でYouTubeやInstagramを見てメイクを研究したり、自分で試したメイクをインスタにあげたり、SNSで美容情報の交換をしたりというインドア派。特にハマったのはビフォアとアフターを見せてくれるメイク動画です。“こんなに変わるんだー”という驚きや、“その人その人に似合うメイクがある”という面白さがありました。今考えると、美容部員という仕事を志した理由は、これによってより明確になった気がします」

家庭環境のストレスから「自分でいろいろ決める立場になりたい」=「自立したい」という気持ちに

———上京するにあたり“家を出て自立したい”という気持ちが強かったということもうかがっているのですが、これは何か理由があったのでしょうか?

「家庭の話になってしまうのですが、私が5歳のときに母が離婚して、そのあと再婚。弟が生まれました。何回も苗字が変わり、引越しも多く、その環境の変化に私自身がついていけなかったんですね。本当にとても辛かった。中学生のときはそのストレスからひどい肌荒れに苦しみました…。

さらに生まれたばかりの弟も数年は手がかかる時期。早く家を出なければいう気持ちはどんどん大きくなっていました」

———自分自身が落ち着かない環境だったからこそ、人より早く「自分でいろいろ決める立場になりたい」=「自立したい」したいという気持ちが強くなっていったってことですね。

「はい。先ほど“あまり外に出ない子だった”という話をさせていただきましたが、この環境だったからこそ、誰かに何か言われて傷つきたくなくて…。人や外部との接触を自ら絶っていたのかもしれません」

上京していろんな扉が次々と開きはじめた。今は時間が5倍速で流れている

———上京前との変化をご自身で、どう感じていらっしゃいますか?

「それが、ものすごく積極的になったんです。自分でもびっくりするくらい。昔は人と関わるのが面倒だと思っていたのですが、今はもっともっといろんな人と関わって、いろんなことを吸収したいなって思っています。

メイクもファッションも昔と比べたら随分変わりましたね。そして、そのおしゃれをきっかけに人とのつながりがさらに増えていくんです。通っているエステティックサロンの女性経営者の方とも縁あって仲良くさせて頂いたり、また大好きな古着屋さんで、そこの店員さんを介して知り合った人とお付き合いすることになったり。

上京したことで私自身のいろんな扉がどんどん開いていったという感覚で、今は本当に毎日やりたいことが多すぎて時間が足りません。以前に比べて5倍速くらいで時間が流れています(笑)」

とある日の手作りランチ。体のことを考えて野菜は水素水につけて農薬を落としてから使うようにしたり、お肉は国産のものを買ったり素材には気を使っているそう。食べるものを自分で決められるようになったのも、自立して良かったことのひとつ。

ファッションと同じで家具もヴィンテージ風のものが好みだというAさん。毎日、お気に入りのローテブルの上でメイクをするそう。

コスメ収納ボックスにはリップがずらり。選ぶ決め手は発色の良さと、保湿効果が高いもの。必ずカウンターで試してから購入するのだそう

———念願の美容部員さんとして活躍されてますが、お仕事はいかがですか?

「まだ美容部員として働いて3か月ですが、肌やメイクのノウハウが自分の中に蓄積されていて、とても勉強になっています。

派遣社員という形で働かせていただいているのですが、職場での悩みをコーディネーターの方に相談できたり、未経験で不安もあるのでささいなことでも気軽に連絡できたりする環境はとても心強いです。急に正社員として働くよりもそこから日々、少しずつステップアップできる働き方が今の自分に合っていると思います。

店舗に来られたお客さまに似合うリップやアイシャドウを選び、お客さまが満足して帰られたときが本当に嬉しいですし、そこにやりがいを感じています」

過去の経験と興味を上手に掛け算しながら自己実現を目指す

21歳とは思えない落ち着いた話し方をするAさん。「実は今、新しい目標があって…」と話してくれたのは、自分でエステティックサロンを作ること。現在、山口で上京を目指していた頃のように独立のために資金を貯めているところだそうです。

過去の経験から芽生えた強い「自立心」、叔母さんのサロンを手伝いながら目にしたことやメイク動画への興味からうまれた“人をキレイにしたい”という「やりたいこと」。これらを上手に掛け算しながら、東京での毎日に手ごたえを感じ始めたAさんはご自身の人生をまっすぐ進んでいる…インタビュー中も目を逸らさずに落ち着いて話す彼女からそんな印象を強く受けました。

これからは「自分らしさ」を大切にしていきたい

今はさまざまな働き方を選べる時代。選択肢がたくさんあるぶん自分の仕事について悩む人も多いのではないでしょうか。私の居場所はここ? もっとやりたいことがあったのでは? もしその疑問が少しでも自分の中にあるなら、答え探しの第一歩は“知ること”から。@cosmeキャリアでは業界のプロによるキャリア相談やセミナーなどのサポートも多数。自分らしい働き方を見つけるきっかけにしてみては?

取材・文/坂本綾乃

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