ジミー チュウ / ジミーチュウ オード パルファム 口コミ

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doggyhonzawaさん
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4購入品

2017/9/2 20:41:17

憎しみや嫉妬は、他者への愛情の裏返しではない。自己愛の外殻、硬くてトゲだらけの攻撃的な鎧だ。さながらクリスチャン・ルブタンのスタッズ・パンプスや、2匹の蛇が絡み合うようなジミー・チュウのストラップサンダルのように。いびつな自我は、他者への歪んだ愛情を容易に自己愛による憎しみへと変え、相手に牙を向ける。

牙と言えば、蛇。ジミー・チュウはパイソン柄パンプスも有名だ。

パイソンレザーとは、ニシキヘビの革を加工したものだ。その独特の鱗模様に加え、近年ではカラフルな仕上げ色も増え、人気を博している。ジミー・チュウ自身、パイソンがいて当たり前のマレーシア出身だから、このエキゾティックなデザインもまた彼にとっては必然だったのだろう。(←好き嫌いはあるよな)

そんなパイソン柄をしかもピンク色にしたボックスで2011年にリリースしたのが、ブランド初のフレグランスとなったジミー・チュウ・オードパルファムだ。靴やバッグなどのジミー・チュウ製品は、庶民にはなかなか入手しづらい価格帯だが、ことフレグランスに関しては安価に販売されていて好感がもてる。それでいながら、調香師は本格派だ。現在はシャネル専属調香師となっているオリヴィエ・ポルジュがたずさわった作品。

ベネツィアンカットグラスを思わせる小さなガラスライトのような、あるいはフラワー・ボムのごとき手榴弾のようなこんもりとしたボトル。そのスクゥエアキャップを外してスプレーすると、一瞬広がるのは透明感のあるグリーンな香り。そしてすぐにみずみずしい涼しげなフルーティーに変わる。初めてジミー・チュウをつけたときは、なんだろう?アップルかな?クロスグリかな?とあれこれ考えたけれど、どうやらクレジットを見るとペア―(梨)の香料をイメージしているようだ。言われると「あーなんとなく」とは思うが、相変わらず複雑に絡み合った香料から何かを嗅ぎ分けるのは難しい。そう思う。

5分もすると、洋ナシの香りはちょっと不穏な空気を漂わせてくる。花弁の奥に潜むややツンとしたようなダークな蜜の香りがしてくる。こちらもローズかな?くらいにしか思わなかったけれど、実際はタイガー・オーキッド、つまり蘭の花の香りをイメージしたブレンドのようだ。

ただこのミドル、かなり評価が分かれると思う。ペア―の甘さに、ベースのバタースカッチ風の香りが絡み合って、超絶甘く濃厚なグルマン系の香りがこれでもかと広がってくるからだ。そして、ラン系の少しくぐもった花粉のような低い香りが混じる。これはとても妖しいミドルだ。さながら甘い毒を思わせる。香りは異なれど、ヒプノやエンジェル、ロリータレンピカやダチュラ・ノワールのように、どこか禁断の甘苦い毒系の雰囲気がじわじわと押し寄せてきて不穏だ。バターとハチミツと塩で作ったタフィノートの陰に、パチュリのスパイシーノートが隠れているようで、その湿った暗さが、甘さと相まって危険な香りを際立たせている。そんなミドルが3時間ほど続く。

ラストは不意に訪れる。気が付くと濃厚なキャラメルノートとペア―の甘さ、蘭のツンとした暗さは消え、ややソーピーに傾いたムスクが淡く漂っている。実際バタースカッチのようなこっくりしたスモーキーな甘さがベースだと思うので、ラストというより、ほのかな残香か。

気温が涼しくなって、少し乾燥してくる初秋から冬にかけて、こうしたグルマン系の濃厚な甘さをもつ香りはなぜか胸をせつなくさせる。誘うような濃密なスイートと、どこか暗くスパイシーな香りのコントラストは、さながらピンク色に染められたパイソンの革そのもの。甘くかぐわしく心を躍らせるのに、毒があってまがまがしい。それでも、心が惹きつけられてその美しい鱗に触れてみたくなるような禁断の香り。

ジミー・チュウ・オーデパルファンのセンシュアルな甘さにひたっていると、己の尻尾を食み、飲み込もうとする大蛇、ウロボロスを思い浮かべてしまう。相手を誘惑して毒牙にかけようとするも、狙った獲物は自分の尾だったのだろうか?甘く苦い毒は相手の体にではなく、己の内に徐々に広がるのだ。嫉妬、憎しみ、不安。それらはときに麻薬のような快感を脳に与え、絶えず人をその漆黒の感情の淵に誘うという。そのうねる姿こそ、ジミー・チュウのサンダルの蠱惑的なストラップに見えてくる。足首に巻き付いて離れないパイソンのように。

もしも気分が滅入っていて、嫉妬や憎しみにとらわれていることがあるなら、この香りを身にまとってみるのも一興。そんなネガティブなときこそ、このフレグランスはなぜか自分に優しい。ピンク・パイソンの誘うような甘美な毒は、やがて感覚をじわじわと麻痺させて、全身の自由を奪うだろう。

その恍惚に巻き付かれて、狂おしく果てて。

  • ジミー・チュウ ストラップ・サンダル by doggyhonzawaさん
  • ジミー・チュウ オードパルファム by doggyhonzawaさん
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