セルジュ・ルタンス / Jeux de peau(パリのバゲット) 口コミ

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doggyhonzawaさん
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4購入品

2016/11/12 21:08:09

幼い子が丸いほっぺたをさらにふくらませ、ちぎったバゲットをもぐもぐしている。焼きたてパンの香ばしいクープ(皮)の匂い。ほんのり甘い酵母と、バター&ジャムのふくよかな香り。微笑ましく見つめる母の横顔。我が子の指についたジャムをいたずらっぽく舐めながら、母が言う。「食べちゃうぞ!」キャッキャと声を上げる子どもの笑顔。母と子のスキン・ゲーム。

セルジュ・ルタンスのジュードポーは、そんな微笑ましい食卓の情景を連想させる、温かくて甘い、包みこむような香りだ。公式サイトには、フランスのバゲットの香り、あの硬くて長いフランスパンの匂いとある。だが、ジュードポーというネーミングは、パンや小麦とは全く関係ない。直訳するとスキン・ゲームであり、「肌の遊び」となる。では、パンや小麦を思わせる香りと「肌のふれあい」、その二つには一体どんな関係があるのだろうか?そこにはなぜか、ルタンス自身の幼き日の悲しい思い出が見え隠れする。

ジュードポーは、セルジュ・ルタンスの香水の中では比較的近年の作品で、2011年にお目見えしている。香りの構成イメージは、次のとおりだ。

トップ:ミルクノート 小麦
ミドル:リコリス イモーテル ココナッツ
ラスト:オスマンサス アプリコット スパイス ウッディノート サンダルウッド アンバー

美の魔術師とも言われるセルジュ・ルタンスの幼年時代。その頃、焼きたてのバゲットに感じていた思い、その郷愁をテーマにすえた香りなのだろうか?香りの前半は、食べ物の匂いを思わせるグルマンノート、そして後半は落ち着いたウッディノートに変化し、大きくニ段階で変わるイメージだ。

ジュードポーを肌にのせると、付けたてから一気に、小麦を焼いたトーストノートが主張してくる。パンを焼いてきつね色になったときの香り。同社のアンボワバニールと付け比べると、アンボワバニールの方がフルーティーな酸味と花の香りが感じられるスッキリしたオープニングなのに対し、ジュードポーは小麦や酵母の生っぽさにミルクの匂いも絡み、それらが焼けてこんもりしている雰囲気。不思議なことに塩バターっぽいテイストも出ている。アツアツのパンケーキにバターをのせて、それがじわりと溶けだしてきた頃にメイプルシロップを回しこんだような。そんな甘苦い風味も感じられて、とてもおもしろい香りだ。

やがて、付けて30分もすると、そんな香りの奥に、スッキリとした冷静な部分が感じられるようになってくる。それは、きつね色のパンの香りが冷めてきて、焦げ茶色のテーブルや周囲の木の香りに侵食されたような感じ。これが後半の香りになってくる。

この後半の香りのメインは、シダーとサンダルウッドの香ばしいウッディノートだ。あれ、最初からこんな香りだっけ?と思うくらい、後半はサンダルウッドがメインになって主張してくる。そして、この柔らかく甘いサンダルウッドの香りが、大体6〜8時間で消失していく。

全体的な印象は、メンズ寄りの香りだと思う。特に後半のサンダルウッド&アンバーは、男性的な香調に感じられる。秋冬に向いているあたたかみを感じる香りなので、どこか淋しさや人恋しさを感じたときなどに使うとよいと思う。なぜなら、「人恋しさ」は、この香りを語る上で大きなキーワードの一つだからだ。それはセルジュ・ルタンスの生い立ちにも大きく関係している言葉だ。

セルジュ・ルタンスは修道院で育った。しばらく母子で世話になっていたが、厄介者とみられていたらしく、修道女たちからは常に冷たい仕打ちをされていたという。そんな中、母と一緒にとる食事の時間は、幼い彼にとって、特別なひとときだったのではないだろうか。パンは母との思い出の香り。母とともにふれ合うことができた、数少ない修道院での楽しみではなかったろうか。

だが、やがて母は修道院を去っていった。彼一人を残して。

母性のもつ無償の愛、常に自分をあたたかく包み込むように見守る母の存在は、子どもにとって唯一無二の神のようなものだ。だから、彼がそのとき失ったものの大きさは、自分ごときがとうてい想像できるものではない。けれど

この香りには、ミルクや小麦の匂いという、子どもの成長を示唆する食べ物の部分と、サンダルウッドという熟成された大人を暗示する部分があり、それらが前後半で拮抗している。そして、フルーティーでフローラルな部分がほとんど感じられないのが特徴だ。それは、「女性性の欠如」を表してはいないだろうか。それが、求めてやまなかった、けれど彼の元を去っていった「母の喪失」と「母への執着」を象徴しているように思えてならないのだ。

だから、ジュードポーなのだろう。

もっともっと、一緒に暮らして甘えたかった、母に望んだジュードポー。

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