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どうしよう?女は明らかに焦っていた。明日、男の人と公園でデートする。デートじたい何年ぶりだろう?先日、友達の紹介で知り合ったばかりの2人。初対面で意気投合して「外苑のイチョウを見に行きたい!」とはしゃいだら「知ってる公園ですけど、そこもイチョウがきれいですよ。一緒にどうですか?」と誘われた。その日が明日に迫っている。明らかにドギマギしている。
服は決めた。靴ももう磨いた。メイクは薄めでいく。キャラはこの前のノリで。あ!でも香水はどうしよう?最初だからやめとこうか?でもあたし香水つけないと落ち着かないかも。うー。
ドレッサーの鏡に映るのはもう若くない自分。鏡の下に並べられた数々の香水ボトル。「香水をつけない女に未来はない」ココ・シャネルの言葉がよみがえる。やっぱりつけていく!でもどれ??あれこれ考えた。真剣に悩んだ。そして女は不意に1本の楕円形ボトルをチョイスした。
「うん、これでいく!香りも柔らかいしトビも早い。ディプティックのオー・ローズ、君に決めた!(←この時点で実は自分でもアウトなキャラだとわかってはいる)」
ディプティックのオーローズは「バラの水」の名にふさわしいシンプルなオードトワレだ。香調で言えば、フルーティー・フローラル・ムスキーといったところ。読んで字のごとく、トップはフルーティ、ミドルはローズ、ラストはソーピーなムスクへと変化していくローズ系の香り。
スプレーしたてのトップは、とてもフルーティーな香りがふんわりと広がる。アクアティックなライチのノートだ。わずかにプラスティック様のファセットも伴うが、まさに朝露に濡れたバラからひとしずくの水滴が落ちたようなボトルイラストそのものの印象。ひんやりとしていてみずみずしい朝の雰囲気を表している。
3分ほどすると、ライチの透き通るような香りの下から同じ高さでローズの香りが広がってくる。ピンクの薔薇を思わせる可憐で柔らかいローズ香だ。ディプティックによると、ダマスクローズとセンティフォリアローズの2種類のイメージのようだ。青みも濃厚さもないさっぱりしたローズ香なのでセンティフォリア系の特徴が強いように思う。朝に咲いた薔薇が日の光を浴びて可憐にたたずむ姿、デイタイムの薔薇をイメージしたような香り。
1時間ほどすると、ローズ香と入れ替わるようにソーピーなムスクが感じられるようになる。構成を見るとシダーやホワイトムスクとなっているが、ウッディはさほど感じない。こちらもとてもライトなムスクで、石鹸のツンとした感じはなくシャンプーの残り香のよう。1日の疲れを落としたシャワー後の香りといった風情だ。
してみると、トップが朝、ミドルが昼、ラストが夜といった感じに時間的経過を押さえているフレグランスだということが分かる。昨今はあえて3段階の変化をしない、よく言えば前衛的な香り、悪く言えば調香の処方を無視した作りの香りも多いけれど、これは分子揮発のタイミングのズレをきちんとふまえた調香作品だと言える。
ポイントはオードトワレとはいえ、持続時間が2時間いくかいかないかという点だろう。この淡さと持続時間はトワレではなくコロン濃度だ。全体にとても揮発しやすい軽い香料を集めてブレンドしているように思う。この点はこの作品の大きな特徴だ。早く消えるのが好きな方もいるし、ずっと肌に残っているのが好きな方もいる。そういう意味では、いつでも気軽に使ってすぐに香りが変化して消えていくタイプのフレグランスが好きな方にはいいと思う。特に、一般的な薔薇香水よりもずっとフルーティーでライトな香り立ちなので、薔薇の香水なんて濃厚で苦手という方や、柔軟剤よりワンランク上のライトな香りに包まれたい方などにはうってつけだろう。香水みたいにきつい香りはNGという方にもおすすめの香りだ。
「うん、やっぱりオーローズにしとこう。」女は決めた。シュッとデコルテにスプレーして、いつもより念入りにナイトマスクをしてベッドにすべりこむ。灯りを消して暗闇の世界にいざなわれる。目の奥にイチョウの並木道がぼんやりと広がる。その鮮やかな黄色の世界を男の人と歩く…。そう思うだけでドキドキした。
しきつめた黄色の絨毯。公園のベンチに座ってどんな話をしよう?はー。思わず吐息がもれる。今夜は眠れないかもしれない。
そんな思いをそっと包みこむかのように、フライングして身にまとったオーローズの香りが、ブランケットの隙間から柔らかく立ちのぼってきた。
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