シャネル / レ ゼクスクルジフ ジャージー オードゥ トワレット(ヴァポリザター) 口コミ

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doggyhonzawaさん
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5購入品

2017/2/24 05:01:21

シトラスは苦手。フローラルは飽きた。オリエンタルはスパイシーでNG。ウッディは最初からない。そんな方は、ちょっと毛並みの変わったこのジャージーのような香りを一度試してみるといい。

ジャージーは、クリーミーでほんのり甘い、けれどどこかシャープなアロマティックを感じさせる不思議な香りだ。それはまるで、柔らかく上質なファブリックの服をふわりとまとったときの匂いのような。

シャネルの香りのエクスクルーシヴラインである、レ・ゼクスクルジフ・ド・シャネル。その中にあって、ジャージー・オードトワレは、2011年に発売された比較的近年の作品だ。調香師は、シャネル専属調香師3代目ジャック・ポルジュ。彼にとっては晩年の作品。

ジャージーを初めてつけたときの印象は今も忘れない。柔らかい革製品のようになめらかで温かみがあり、何の香料が使われているのかほとんど分からなかった。唯一感じられたのは、クマリン&ヴァニラのクリーミーなコンボ。中心となって拡散している、やや暗くシャープな香りの正体は、見当すらつかなかった。

やがてそれが、こだわり抜いて選ばれた特別なラベンダーの香りだと知って、とても驚いた。基調がラベンダー&ヴァニラ&ホワイトムスクだという。ゲランの名香ジッキーの向こうを張った作品だろうか?でも、全然ラベンダーの香りがしない。少なくとも、自分が知っているラベンダーの香りではない。このスモーキーな香りのどこがラベンダーなんだ?そう感じて、戸惑いさえ覚えた。

ラベンダーは、昔から男性用の香水によく用いられる代表的な香料だ。女性がよく揶揄するところの「男性のトニックの匂い」は、たいていの場合、シャープなラベンダーと湿った土っぽいオークモス、甘苦いクマリンらをミックスしたフゼア調の香りのことを指す。フゼアは女性用香水にはないタイプだ。つまり、ジャージーは、きわめて男性的な香料であるラベンダーの魅力をあえて女性向けにアレンジした作品ということだろう。

それはまさに、ココ・シャネルが、かつて男性用の衣服にしか用いられていなかったジャージー素材をフィーチャーし、女性用の新たなエレガンスドレスを生み出した大胆なアイディアそのものだ。

ジャージーをプッシュすると、クリーミーなヴェールがふわりと広がる。同時に、ややカンファーっぽい透明な清涼感。そしてすぐに、クマリン独特のミルキーな甘苦さも感じられる。それらが混然一体となって展開する。シトラスでも、フルーツでも花でもスパイスでもウッディでもない。どこか上昇し続けていく体温のような温かさ、わずかに酸味のあるメタリックなムスクも含んで、角のとれた、しなやかでまろやかな香りが広がる。それがジャージーだ。

トップ、ミドル、ラストの時系列で変化が少なく、最初から全ての香料が一斉に感じられるタイプ。そして、ほぼそのまま減衰していく。言ってみれば、昨今のシャンプーや柔軟剤のようなパーソナルケア製品的な香り方だ。持続時間は、トワレとはいえ8〜10時間程度と長い。面でつけるよりも、香水やオードパルファンのように、比較的体温が高い場所に点で付けた方がよいタイプだと思う。ラベンダーのモワット感やシャープさは、時折メンズっぽい陰影を見せて出てくることがあるから、そこがこのトワレを選ぶかどうかの分かれ目だろう。あとは、値段と扱っている店舗の少なさだ。

イメージ的には、上質で柔らかな生地の服を思わせるラグジュアリー感満載な香りだ。ジャージー素材は、伸縮性がある柔らかな編みのファブリックを指し、現代ではポリエステルで作られるトレーニングウェア系の印象が強いかも知れない。けれど、19世紀にシャネルがこの素材で作ったドレスの功績は、当時の女性にとってはどんなにか大きかったことだろう。

肩や胸をはだけ、バストを強調するデザイン。ギリギリとウェストを締め上げるコルセット。足が絡まるような長いスカートを大きくふくらませるためのパニエ。19世紀の女性服のエレガンスは、ただただ窮屈で、がんじがらめに縛られた画一性の上に成り立っていた。男たちが戦争に出かけ、女性がなりふり構わず髪を振り乱して男の仕事場で働かなければならなかった時代。そこには新しいエレガンスが必要だった。動きやすく、シンプルで軽い服。そんな誰もが求めていた物を既成概念を打ち破って作ったのがココ・シャネルだった。彼女は言う。「私は女の肉体に自由を取り戻させた」と。

ジャージーはそのモニュメントだ。ときに男性のように荒々しく生きても、女性らしい優しさと温かさと柔らかさをいつまでも失わないように。女性がどこまでものびやかに暮らせるように。女性の心と体を永遠の自由へといざなう香り。

  • 柔らかで上質なファブリック by doggyhonzawaさん
  • ジャージー オートトワレ by doggyhonzawaさん
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