- クチコミ 85件
- 注目人数 人
- 購入者のクチコミで絞り込む
クチコミ
アクア・ユニヴェルサリス。ラテン語だ。英訳すれば、ユニヴァーサル・ウォーター。ユニヴァーサルは意味が広い。「普遍的な水」または「万能の水」、あるいは「世界共通の水」といったところか。もしかしたら「宇宙的な水」かも知れない(笑)。いずれにせよ、作者の自信が感じられる壮大なネーミングだ。
この香りをプロデュースしたフランシス・クルジャンは、かつてクエストや高砂フランスで活躍していた調香師で、2009年に彼自身の名を冠して、フランスでパヒュームメゾンを立ち上げた。それ以後、香水界のスターとか天才調香師の名を欲しいままにし、実際、幾多の名誉ある賞を受賞している今話題の人物。メゾン創設とともに発表され、今ではブランドアイコンとして認識されている香りが、このアクア・ユニヴェルサリス・オードトワレだ。
そんなアクア・ユニヴェルサリスは、シトラスとスズランの香気、ソーピーなムスクが不思議なバランスで香る、しっとりみずみずしいフレグランスだ。
アクア・ユニヴェルサリスをスプレーすると、まず感じられるのは、さっぱりとしたレモン様のシトラス香。だが、3秒もせずにその周りを甘くクリーミーな雰囲気の香りが包みこむ。まるで、シトラスの爽やかさやとがった部分を丸めるかのように。それはオレンジフラワーのこんもり感かも知れない。アクアティックではあるが、瓜系の青臭い感じはない。これは地味に重要なポイントだ。
やがて5分もすると、ミドルの香りが安定してくる。人工的ながら可憐な雰囲気のスズランの香り。そして、その下からせりあがってくるソーピーなムスク。この2つの香気が複雑に混じり合い、フローラルでもなく、ムスキーでもないバランスでハーモニーを奏で始める。このミドルを気にいるかどうかが大きな分かれ目だろう。このミックス香は、穏やかながら3〜4時間ほど肌の上で香り続け、大きな変化もないまま消えていく。
全体的にみると、最初から最後まで、シトラスもスズランもムスクも、それぞれの特徴が突出しないように、互いに角をとりあってまろやかにミックスされている。そんな印象。この手の香りは、明確な顔がないぶん、人に嫌われにくく、香り初心者の方にも「何だろう、いい香り」と受け止められやすいタイプだ。それは、特にビジネスライクなシーンで、イメージアップを図れるアイテムとして重宝するかもしれない。
だが。
いくつか気になる点はある。一つは香りじたいのことだ。この半年つけていて、ミドルでシトラス系キッチン洗剤の匂いというか、ビニルっぽいような特有の苦みが強く出て、気になることがよくあった。大体、気温の低い場合がそうだったので、試しに風呂上がりの上気した肌につけると、苦みが少なく、まろやかでふんわりとした心地よい香り立ちになることが分かった。だから、この香りを使うなら、気温や体温が上がってくる初夏〜夏がおすすめだ。一年中使いたい人は、特に入浴後に使うと苦みの少ないよい香り立ちが楽しめると思う。
二つ目は値段だ。正直、繊細でセンスある調香とは思うけれど、この手の淡いウォータリーな香りは、概して人工香料が多く使われているものだ。それは決して悪いことではないが、値段が70mlで3万円を超えるとなると話は別だ。これくらいの香料構成なら、5千円もあれば似た物がいくらでも手に入るだろう。ドバイやアラブの富豪ならポンポン買っていくかもしれないが、あいにくこの国には石油もターバンもない代わり、徹底したシビアさだけはある。良い香りなら、毎日でもつけたいのだから、安く買えるにこしたことはない。新時代のニッチメゾンは、そのへんも命題としてとらえてほしいと思う。
そんな庶民の願いなど露も知らぬクルジャンは、この香りについてこうコメントしている。
「シャワーを浴びた後、きれいな素肌に新しいシャツを着る。洗いたての清潔な肌と、アイロンのかかったパリッとしたシャツ。肌とシャツの間にある空間。そこにも小さな一つの宇宙があるんだ。そこに漂う香りはどのような香りが一番ふさわしい?」
うーむ、これって一番ありえないと思っていた「宇宙の水」だったとか?それにしても、洗いたての素肌と清潔なシャツ、その間に置きたい香りって…。その謎かけの答えは一体何だ…?
そうか、シャボン玉だ。お風呂上がりの肌と清潔なシャツの共通項は、石鹸や洗剤のシャボンの香り。そして、宇宙にきらめくのはたくさんの星々だ。さながら、七色の宝石のようなシャボン玉を幾つも幾つも散りばめたような……。
それで合点がいく。フランスのクルジャンの店には、幼な子が遊ぶためのシャボン玉が置いてあるそうだ。
アクア・ユニヴェルサリス、それは夢いっぱいふくらませた虹色シャボンの宇宙の香り。
- 使用した商品
- 現品
- 購入品
この商品を高評価している人のオススメ商品をCheck!
戻る
次へ
メゾン フランシス クルジャンについて
メーカー関係者の皆様へ
より多くの方に商品やブランドの魅力を伝えるために、情報掲載を希望されるメーカー様はぜひこちらをご覧ください。詳細はこちら