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ラルチザン パフューム / オンドソンシュエル 口コミ

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ラルチザン パフューム オンドソンシュエル

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doggyhonzawaさん

doggyhonzawa さん
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「本や香水って、生きていくのには必要ないけど、生きているって実感するためには必要でしょ」(山田詠美「放課後の音符」より)

男女の営みへの興味、そしてそれに伴うしがらみ。思春期の男の子の頭の中なんて、99%がそのことで占められている。おっと、卑怯な言い方だった。自分の思春期はそうだった。

そんな性的な事柄だけが、世界の唯一絶対の事実だと感じていた思春期まっただ中の頃、山田詠美さんの作品群に出会えたことは本当に幸運だった。むさぼるように読んだ永遠の夏のような日々を、今も昨日のことのように思い出す。冒頭の名セリフは、今も心に焼き付いている言葉の一つだ。

オンド・ソンシュエル(欲望・官能の波)の香りを初めて身に付けた時、これまでにない衝撃を受けた。絶対にどこかでかいだことのある香りなのに、どうにも特定できない。ほぼ1ケ月、毎日つけていた。けれどやはり思い出せない。分からない。ただ一つ感じたのは、これはとても危ういバランスの上に立った、何か危険な香りだということ。まるで、心に欲望の爆発を起こすための導火線や火薬のような。

トップ。シトラスとスパイスの爆発から開口する。シトラスといっても、グレープフルーツ様の苦みが強く出ているだけで、スパイスミックスの香りが9割といった印象。まずペッパー、ジンジャーの鼻孔の奥を刺激する辛みを感じる。この2つは精油になると、キッチン用スパイスの風味とはかなり異なる香りだ。そしてシナモンやクローブの痺れるような風味も出ている。いわゆるホットスパイスのミックス香全開だ。もし若干でもグレープフルーツ様のフルーティーな苦みがなければ、これは香水として感じられないギリギリの線。

やがて5分ほどでミドル。ホットスパイスの熱がすっとひいていく不思議。ただ、まだ温かみが残る全体の雰囲気に、すっとしたウッディ系の清涼感、森の針葉樹から感じるような香りが少ししてくる。これがジュニパーベリーとカルダモンの主張だろうか?ややクールだ。そしてホットスパイスとアイシーな香りの危うい拮抗となる。情熱と冷静のあいだ。外へ広がろうとする赤と、内へ鎮静しようとする青が混じった雰囲気。そう、紫色の香り。

そうか。だから、「エクスプロージョン・オブ・エモーション」第二弾の3つのオー・デ・パルファンは、ヴィヴィッドなパープルの化粧箱に包まれているのかも知れない、ふとそんなことを思う。

苦くスパイシーなミドルは、刻々とさまざまな香りの表情をうかがわせる。ときにゾンカのように漢方薬づけのセロリのような風味を呈したかと思えば、ときに森の中で針葉樹の葉を手でもぎとったような清涼感を得る。また、うっすらとクリーミーなフローラルを感じたかと思えば、酸味と香ばしさと伴ったウードの深みを感じるときもある。全ての香料が等しく主張しあい、自分の心や体のありようによって、さまざまな感情の波のように、ふわりふわりとそれぞれの香りが顔をのぞかせて揺らめくといった様子。とても不安定。

やがてラスト。けれどこれはもっと明瞭な色を失う。知らず知らず夏の暑さにやられた自分の肌の匂いや汗の匂いのようにも感じられ、消え入りが早い。何か自分の匂いと同化してしまったような錯覚を得るラストだ。ベースには、ムスク、ウード、アンバーがクレジットされているようだが、これらの配合のミックスが、少し合成ビニールっぽいようなフェードアウト。まるで、セロリ料理の後に残った塩コショウのようなラストだ。とても不思議な感じ。

全般的に、オンド・ソンシュエルの香りは、料理に使うミックススパイスの袋を開けたようなシャッキリする辛みと苦み、熱を感じさせる。甘味はない。中華料理に使用するミックススパイスに「五香粉」というのがあるが、そのシナモンを弱くした感じ、あるいは、龍角散や仁丹のもつ辛くて甘苦みをもった漢方系素材の味。そんな雰囲気が強いので、香水として使うには、かなりこれ系統の香りが好きな方でないと難しいかもしれない。

ここまで書いてはたと気づく。そうか、この香りはやはり、肉料理に使うスパイス以外の何物でもない。とすれば、人間という生身の肉にふりかけるスパイスだ。まるで、宮沢賢治が「注文の多い料理店」で、猟師たちの体中にクリームや、香水と偽って酢をすりこませたように、誰かにおいしくいただいてもらうための。

俺も香りに感化されたのだろう。肉欲と料理の狭間の危険なゾーンに話がいきそうになる。

オンド・ソンシュエルはそんな、人の根源的な欲望を揺らす波。食欲や性欲への情熱と、それを鎮静化させようとする冷静さの間で揺らめく感情の揺らぎ。赤と青の間でたゆたう心に、「ほら、あなたは生きている」とささやく、紫色のスパイシーな誘惑。

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