シャネル / レ ゼクスクルジフ ミシア オードゥ トワレット(ヴァポリザター) 口コミ

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doggyhonzawaさん
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4購入品

2019/2/9 16:51:36

ガブリエル・シャネルの人生に最も影響を与えた女性は?といえば、間違いなくミシア・セールの名が挙がるだろう。彼女はその美貌と巨万の富を使って幅広く人脈を広げ、19世紀パリ社交界の女王として君臨した女性。ルノワールが惚れこみ、ロートレックが彼女を描きたがり、ストラヴィンスキー、コクトー、そしてピカソまでが、彼女にパトロンになってほしくて取りいったという正真正銘のセレブ。

2015年に発売されたミシアは、そのミシア・セールの名前を冠した「レ・ゼクスクルジフ」通算15作目にあたる作品だ。この作品で初めてシャネル4代目専属調香師としてデビューしたオリヴィエ・ポルジュは次のように語っている。

「この香りは私の初めてのシャネルです。ミシアとの出会いはシャネルの人生にとってのターニングポイントでした。しかし私はミシアという女性そのものを香りとして捉えませんでした。シャネルがミシアによってもたらされた匂いを捉えることで、成功の香りを生み出そうとしたのです。だからこそ、シャネルが衣装デザインをした「バレエ・リュス」(ミシアがスポンサーであり、このバレエ団に芸術性と過度なメイクアップと衣装センスを持ち込んだ)の舞台裏の空気とバレリーナたちのメイクアップの香りを私は選びました。」

シャネルは、ミシアの紹介で「バレエ・リュス(ロシアバレエ団)」の天才プロデューサー、ディアギレフと出会う。彼はそれまでオペラの付随舞踊だったバレエを総合芸術にまで高めた人物だった。ミシアEDPはそのバレエのバックステージの様子を表現しようとした香りだ。

トップ。鼻腔の奥がむせかえるほどの粉っぽいイントロ。わずかなアルデハイドと共に、アイリスのほの暗いパウダリーが全開で主張する。澱粉を思わせるほどコナコナしている。なるほどディオールオムでアイリスブームを作ったオリヴィエの自己主張が感じられる開幕だ。オペラのバックステージ、慌ただしく体中に白粉を塗るバレリーナたち。メイクが仕上がるほどに上がっていくテンションなどを表現したであろうトップ。

やがて5分ほどすると粉っぽさは落ちつき、下からローズやヴァイオレットの香りが漂ってくる。どことなく凡庸なのはローズとヴァイオレットの取り合わせが微妙だからか。ちょっとピンとこないバランスのコンボだ。メイク室に運ばれた薔薇の花束の香り、舞台の開幕を待つ観客それぞれの香水を思わせるフローラルミックスが広がる。時間は4〜5時間ほど持続する。

気が付くとミドルよりもヴァイオレットの紫の香りが濃くなってきてラスト。ベンゾインの甘さをわずかに添えて。華やかな衣装、壮大なオーケストラ、奇想天外な舞台装置。そんな革新的な芸術に感極まった客が、帰り道、夜風に吹かれながら芸術についてひとしきり語り合う菫色の時間。そんな印象の穏やかなラスト。

全体的に見ると、トップのむせかえるような粉っぽさ、そこからのひかえめなローズ、次第に主張してくる紫のヴァイオレットとベンゾインの甘さ。これらが展開のキーとなる香り。個人的にはミドル〜ラストのヴァイオレット&ウッディが心地よく感じる。バックステージの喧騒、幕が上がり訪れる歓喜の瞬間、そして迎える安らかな夜の香り、といったイメージ。

それでも、何となく首を傾げたままの自分がいる。その理由は次の2点だ。

第一にミシアはシャネルにとって大きな影響を与えたが、2人は親友と呼べる関係ではなかったこと。ミシアはシャネルの中に自分と同じ傲慢さや尊大さを見てとったので、面白がって人に紹介していじっていた節があるし、シャネルじたいもいつかミシアを出し抜いてやると考えていたところがある。二人は無二の親友のように抱き合うこともあれば、口汚く相手の悪口を言いふらし合うことも多かった。いわばプライドの高い気難しや同士。

第二に名前と香りのイメージが合わないこと。確かに「バレエ・リュス」の仕事はミシアとの出会いを元にシャネルがつかんだ栄光のきっかけであったかもしれない。しかしバレエの楽屋を香りで表現するなら、名前は「バレエ・リュス」か「ディアギレフ」の方が合うはずだ。なぜミシアと名付けたんだろう?ディアギレフに出資する際、シャネルはミシアを出し抜いたことで二人の関係がさらに悪化したのに。

スミレのラストを感じながらそんなことを考える。スミレの香りはどこか寂しい。シャネルとミシア、2人の共通点はきっと同じ孤独を抱えていたことだろう。

ミシアという名の香りがある。それはよきにつけ悪しきにつけ、ココ・シャネルを成長させ、影響を与え続けた一人の女性の名を冠したフレグランス。

粉っぽくパサパサしていて、薔薇と菫のように本来一つの花束に並ぶことのない2人の関係を表したような香り。

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