- クチコミ 24件
- 注目人数 人
- 購入者のクチコミで絞り込む
クチコミ
子供の頃友達とやっていた謎の遊びの一つ、目隠し推理ごっこ。それは1人が目隠しをして、もう1人が何かの匂いを嗅がせたり音を聴かせたりした後、その正体を当てるという、今思えばツッコミどころ満載の娯楽。
大人なのでそんな遊びはもうしない。でも、目を閉じてポメロパラディスを嗅いだとしても、ポメロを食べる時のそのひとつひとつの動作、姿形、重量、味、香りまで克明に思い浮かびそう。
それはグレープフルーツよりもかなり大きく、両手で持つとずっしりした果実の冷たい重さが感じられる。片手で待つと手首を痛めそうな世界最大級の柑橘果実で、皮の色はオレンジがかった黄色から薄黄緑までいろいろ。グレープフルーツを蜜柑のようにむいて食べる派の私は、当然ポメロもメリメリむく。そのせいで身体は立派でなくても握力はいつも立派。
ひっくり返しておへそのようにへこんだところにナイフで傷をつけ親指を押しこみ、他の指も使って皮を下のほうに引っ張る。グレープフルーツよりも分厚い皮だが意外とむきやすい。表皮の黄色いところのオイルが手に滲んで少し滑る。甘酸っぱく僅かに苦味のある香りがブシュッとはじけ飛ぶ。
そのあとデリケートな可食部を守っている、皮の内側の白いふかふかしたところを思わせる香りがする。少しもったりした微かに甘苦い独特の香りまで、しっかりと香水の中で表現されているのが凄い。
果肉を包んでいる薄皮を破ると沢山のしずく型の宝石がぎっしり並んでいる。口に含むとパァッと広がる瑞々しい甘酸っぱさ。柑橘系の香水の中でもこんなにまで含まれている水分を感じさせるものはあまりない。
ポメロをむいて食べるだけだが、その行動の一部始終がキラキラした光の中で撮ったスローモーションの映画みたいに思える。そこには生まれて初めて柑橘類を見た人の目線で撮影したような新鮮さがある。あーあ、ポメロのオレンジがかった黄色い透明な果肉にかぶりつきたい。
やがてポメロの香りは薄らぎ、いつの間にか異質な香りが出てくる。とはいえ、こちらも清潔感たっぷりで水分を感じる香りだ。食べ物ではない何か。
それはシャボン。
石鹸じゃなくてシャボン。かなりレトロな石鹸のような香りでシャボン玉から漂ってきそう。そういえば最近シャボン玉遊びしていない。(当たり前だ)
市販のシャボン玉遊び用の液の匂いは、本当にこんな匂いかどうかは定かではない。でも私のイメージの中では透明な薄オレンジのシャボン玉の香り。フォトショップなどの画像加工ソフトを使って、ポメロからシャボン玉に少しずつ変わるように加工したような香りの変化の仕方が面白い。あれ?いつの間にポメロとシャボン玉すり替わった?みたいな。
このシャボンの香りの素はなんとミント、ジャスミン、ローズ。ジャスミンとバラの組み合わせは香水の王道だが、それにミントを加えるだけではこんな清潔感マックスの石鹸っぽい香りにならないだろう。これを作った調香師さんはすごいと思う。そもそも言われなければジャスミンとローズが入っているなんて気がつかないかもしれない。少なくとも私の肌の上ではフローラル感はほとんど無し。
ラストはお日様の下で乾かしたふっくらしたシーツから漂ってきそうな香り。アイリスらしい。子供のころ母が家の中に取りこんだばかりの洗濯物の匂いにどこか似ている。こんな匂いの枕があったら童心に帰って顔を埋めて昼寝したい。柑橘系のトップでもラストがムスクに変って重苦しくなる香水は多いが、アイリスは羽のように軽やか。それでも浮ついた軽すぎる香りにならないのは下でベチバーとアンバーがしっかりと支えているから。
その頃になると目の醒めるような鮮やかなポメロの匂いはもう残っていない。でも記憶の底に置き去りにしていた懐かしい飲み物の香りがする。
幼い頃、ブランドは忘れてしまったが、水に溶かすとオレンジジュースになるというパウダーに夢中だった。お利口さんにしていたときだけ、ご褒美としてそれはどこからか出現する。大好きすぎてその瓶のなかに指を突っ込んで粉を舐めて喜んでいた。
ポメロパラディスは物心ついた頃の情景の匂い。ポメロの香り中に沢山の思い出が隠れている。シャボン玉遊び、粉のオレンジジュース、太陽の暖かさをたっぷり吸い込んでふんわりした洗濯物。それは時々思い出す心のふるさと。
トップノート: ポメロ、マンダリン、ブラックカラント
ミドルノート: ジャスミン、ローズ、ミント
ラストノート: アンバー、ベチバー、アイリス
- 使用した商品
- サンプル・テスター
- 購入品
この商品を高評価している人のオススメ商品をCheck!
戻る
次へ
アトリエ・コロンについて
メーカー関係者の皆様へ
より多くの方に商品やブランドの魅力を伝えるために、情報掲載を希望されるメーカー様はぜひこちらをご覧ください。詳細はこちら