ミラー ハリス / プリュイエ オーデパルファム 口コミ

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doggyhonzawaさん
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4購入品

2019/8/31 14:59:26

また雨か。カーテンをめくって灰色の空を確かめ、女は一つため息をつく。テレビでは、天気予報士が得意げに低気圧と線状降水帯の関係についてまくしたてている。リモコンでテレビを消してソファーに放り投げる。雨の日は髪がハネるからやだなー。肩を落とすと同時にスリップの紐も片方ずり落ちた。

雨なんかキライ、雨なんか大キライ…。鏡の中で口をへの字に曲げている顔をにらみながら洗顔する。顔を洗う一瞬だけ、子どもの頃を思い出す。泳げなくて学校のプールに顔をつけるのがこわかった4年生の夏。「鼻で息を吐きながら顔をつけるんだよ」と言われてぎゅっと目をつぶってやっと顔をつけられた。それ以来きっといつも同じ顔をしてる。洗顔のときも、シャンプーのときも。雨の日も。

髪をブローして、化粧をして、最後に香水棚から香水を取り出そうとして手を止めた。気温は20度台。湿度も高い。大雨。似合う物がない。そのとき、ミラーハリスに「雨」という名の香水があったことを思い出した。確かサンプルがあったはず。ドレッサーの引き出し奥から見つけて軽く手首に付けてみた。

瞬間、オレンジの皮とイランイランの誘うようなフローラルが濃厚に広がった。うげー、エキゾティック。これじゃ強いかも。改めて香水の名前を確かめる。ミラー・ハリスの「ラ・プリュイ」オーデパルファム。日本語直訳で「雨」という名の香水。えー、こんなの雨の匂いじゃないよー、ったく付ける香水もミスったわ…。そう思った瞬間だった。ラ・プリュイの強いイランイラン香の奥から、湿ったパウダリーなヴェールがふんわり感じられてきた。

「え?なにこれ?湿ってる。なにこの香り??」

バラバラバラバラ。アパートの薄い屋根をたたく雨音が強くなった。窓の外ではジャバジャバと水が流れ落ちる音がしている。女はそれでも手首から鼻を動かさなかった。オレンジ系のシトラスがとんだあと、イランイランの濃厚さを中和するかのように広がってきたのは湿ったパウダリーなファセット、でもこれアイリスじゃない。アイリスだったらゲランのアプレロンデみたいに涼しげになるところだろうけど、でもでも粉っぽいのにウエッティー。これなに?おもしろい!

気が付くと、着替えもメイクもそこそこにスマホでラ・プリュイを検索していた。

「ミラーハリスのラ・プリュイは、2011年に発売されたアクアティックフローラル。調香はリン・ハリス。熱帯の雨や雷からインスピレーションを得た香り。

トップ:ラベンダー、ベルガモット、タンジェリン、小麦
ミドル:ジャスミン、オレンジフラワー、イランイラン、カシア
ベース:ベチバー、ヴァニラ」

スマホ画面をスクロールしながら、トーストを口に運んで、アイスカフェオレで喉に流した。

香りの強さは、イランイラン>小麦>ヴァニラって感じかー。この「小麦」っていうのが、今出てるミドルの湿った粉っぽいヴェールだよね。ふむふむ。

熱帯のジャングルを思い浮かべる。鬱蒼と茂った森の中にエキゾティックな原色の花々が咲いている。その森の匂い。バケツをひっくり返したようなスコールが、乾いた大地にほこりを立てて降り注ぐ。森の木々の葉が揺れる。花々から花粉が飛散する。雨と風が密林を揺らして匂いを運ぶ。樹々や花の匂い、ほこりをあげる土の匂い、湿った大地の匂い、新鮮で濡れたタッチ。

ラ・プリュイをつけた手首、イランイランの下からジャスミンの穏やかな香りもし始めている。さらにベースのクリーミーなヴァニラ、土っぽいベチバーの香りも。そしてそれらをつなぐ湿った小麦のパウダリー。その香りにしばし女は時間を忘れた。

いけない!もうこんな時間!

あわててコートを引っかけて飛び出した。足早に駅へ向かう傘の群れ。道路まで出てタクシーを絶対停めようとムキになってる女性。いつもならわき目も振らず歩いていく女が、今日はなぜかゆったりそんな景色を眺めて歩いた。ウエストにつけ直したラ・プリュイのしっとりした粉っぽいフローラルが襟元からふんわりと香っていた。南国の媚薬ともいわれるイランイランは相変わらず強く感じたけれど、小麦とヴァニラのヴェールのせいか、穏やかでみずみずしくて、少しだけ可憐な香りに感じられた。

歩道橋を渡るとき、不意に橋の真ん中で足を止めた。雨に煙る街は、くすんだ灰色の顔をして廊下に立たされた生徒みたいに仕方なさげだ。そのとき、パーンと白くはりつめた重たい空の向こうに、女は一瞬、熱帯の濡れたジャングルを見た気がした。

雨なんかキライ。でも…、たまにはいっか。

雨は小降りになっていた。女は傘を下ろしてたたむと、いつものように歩き始めた。「雨に濡れても」をハミングしながら。少し微笑んで、雨の香りと雨の街を。

  • 歩道橋の上で by doggyhonzawaさん
  • ラ・プリュイ by doggyhonzawaさん
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