Sylvaine Delacourte(シルヴェーヌ・ドゥラクルト) / VAHINA（LA COLLECTION VANILLE） 口コミ

ヴァヒナは、マンダリンとオスマンサスがフルーティーに香るヴァニラベースの香水だ。100mlボトルで135ユーロ（送料込）。シルヴェーヌ・ドゥラクルトのオンラインサイトより購入可能。

◎どんなとき、どんな方ににおすすめ？
・秋。不意にキンモクセイの香りが感じられて、思わずとろけそうになるとき。
・オスマンサス系（キンモクセイ）の香りが好きだけれど、既存の作品はちょっとキツく感じられる方に。
・ヴァニラベースの香水で、ちょっと変わったフルーティーフローラルを探している方に。

◎この香水のよさを３つあげるとしたら？
・かつて香水帝国ゲランの変革期を支えた女性が創ったプライヴェートレーベルの香水であること。その名はシルヴェーヌ・ドゥラクルト。その本物感。
・日本未発売でほぼ人とかぶらないこと。シルヴェーヌの香水は日本からも、オンラインの簡単な手続きを経て個人輸入で購入が可能だ。実際やってみると、さすがゲラン出身とも思える丁寧なサービスで安心感があるが、持っている方はまだまだ少ない。
・「ヴァニラ好き」ならチェックして損はない「ヴァニラコレクション」の１本。ヴァヒナは「フローラルヴァニラ」という位置づけで、他にも「フレッシュヴァニラ」「スパイシーヴァニラ」と表現されたヴァニラ香水が５本も揃っている。

▲ここは気を付けておきたい点
・ヴァニラメインの香水ではないこと。「ヴァニラ」を共通素材として創った「ヴァニラコレクション」の１本だが、「ヴァニラ！ヴァニラ！」と意気込むと肩すかしを食う可能性がある。というのも、使用されているのが高品質のマダガスカル産ヴァニラなので、こちらは本物の天然ヴァニラが香る代わりに、合成ヴァニラよりも香り立ちが弱いという特徴をもっている。これは知っておきたい。

○香りの展開
ヴァヒナの代表的な香料イメージは、次のよう。

トップ：マンダリンオレンジ、オスマンサス、アプリコット
ミドル：オレンジブロッサム
ベース：ヴァニラ、トンカビーン、アーモンド

トップ。つけた瞬間にスプレーした肌に鼻を近づけると、オスマンサス香料のもつメタリックな酸味とプラスティック様のツンとした香りに鼻がやられる。少し香料を飛ばしてからそっと嗅ぐくらいでちょうどいい。するとマンダリンのジューシーなオレンジ感が広がり、オスマンサスの花独特の濃厚な甘さが匂いたってくる。トップからフローラルアピールの強い展開だ。

５分ほどすると、杏仁豆腐の白い独特な苦味が下から出てくることを感じる。トンカビーンとキリッと苦いビターアーモンドのミックスだ。この白い苦味が感じられてくるとミドル。オレンジとキンモクセイの香りに、白いクリーミーとビターなエッジが添えられてくる。

体温高めの自分の肌では、この杏仁豆腐様の苦味が強めに出やすいが、人によってはここでオレンジフラワーの甘さが出てくる方もいるだろう。トップのマンダリンがオレンジフラワーにつながり、トンカビーンとビターアーモンドの香りが、次第にラストのヴァニラに引き継がれて行く展開。

持続時間は7時間ほど。かなり天然香料のやさしい香り立ちを大切にした調香にしているように思う。ラストのヴァニラは焦げ感こそないものの、ウッディラストな少し茶色い風情も感じられて心が浮き立つ。オレンジを伴ったオスマンサス、クリーミーで苦い杏仁豆腐、そしてほんのり官能的なヴァニラ。この３つが、秋のまばゆいオレンジ色の日射しのように降りそそいでいる。ヴァヒナはそんな香りだ。


シルヴェーヌ・ドゥラクルトはこの香りに「ヴァヒナは、パートナー、配偶者、さらには愛人までも意味するタヒチの言葉。かのゴーギャンがタヒチと女性たちに注いだ愛と情熱に敬意をこめて。」といったメッセージを寄せている。ときにキリッと苦く、ときに包み込むように優しく、そしてときに、狂おしく心と身体をかき乱す存在。それがヴァヒナ。

各地を流転し、波瀾万丈の人生を送ったポール・ゴーギャンの人生にとって、なくてはならなかったもの。

それは、女性の存在だったに違いない。

ゴーギャンの絵画は、立体的に描かれた部分と平坦な画面が入り交じる「総合主義」を構築したとされている。ヴァヒナのほんのりスモーキーなラスト、褐色のヴァニラペーストの余韻にひたりながら彼の作品を眺めてみる。

日本の浮世絵にインスパイアされたという、平面的でペンキのように塗った海と砂浜、その前には陰影をしっかり施して、立体的かつ写実的に描かれたタヒチの女性たちがたたずむ。

まるで、南国の強い日射しに灼けたその肌の匂いが、画面からにじみ出てくるようだ。

ヴァヒナ。「愛する者」の匂いが。

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