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紫は心が本当に落ちているときに選ぶ色。そんな話を聞いたことがある。カラー心理学の詳細は知らない。ただ自身の経験から言っても、そんな感じあるかもしれないなと思う。
最近の世情を反映してか、ここのところ、気分をリフレッシュするためのライトなシトラス香か、紫色を思わせるバイオレットやアイリス香を選択することが多かった。
そんな紫色の香りの中で、よく手を伸ばしていたのが、ジョー・マローンのバイオレット&アンバーアブソリュだ。
この作品は、店舗限定の最高セレクション「アブソリュ・コレクション」第二弾の香りとして2019年にリリースされた。これまでもティーシリーズなど高価格帯のコレクションや限定作品は多かったが、今回のポイントは2つ。1つはトップノートの香料を用いていないこと。もう1つは英国を象徴する花とアラビアンナイトをイメージした中東の香料の共演だ。価格は100mlで35000円+税。調香師はマスターパフューマーのアン・フリッポ。
英国人に愛される花、スミレ。そして中東を代表する甘くかぐわしい香料アンバー。ブランドいわく「アラビアンナイトを表したスミレの香り」。このスミレと樹脂の共演はどんな香りを奏でるのか?
バイオレット&アンバーアブソリュのボトルは、メタリックなディープパープルの塗料でキャップと上半分を染めたようなデザインになっている。1作目のローズ&ホワイトムスクアブソリュのときはメタリックなローズピンクだった。おなじみのスクゥエアなステッカーもあえて外した大胆な意匠だ。逆に言えば、ステッカーがなくとも、キャップとボトルのシルエットだけでジョー・マローンと認識してもらえるであろうという自信の表れともとれる。
そんなメタリックな紫のボトルからスプレーする。その瞬間、まず感じられるのは、酔わせるような洋酒の香り。アンバーのバルサミックな香りが強く主張してくる。その中から次第にやや土の香りを思わせるバイオレットリーフ、わずかな粉っぽいフローラルが感じられてくる。のっけから中東感満載だ。
とはいえ、ルタンスのアンバーのようにムッとくるようなアニマリックな雰囲気はないし、比較的スッキリしたアンバーだ。薬草のようなハーバルな感じに、コーラ系で感じられるスパイスを混ぜたような雰囲気。通常アンバーは濃厚で重たい香料なので、これらを揮発誘導させるにはトップに軽くて揮発しやすいシトラス系、特にベルガモットをもってくるとよく合うのだけれど、ここでは確かにトップ香料は感じられない。ただ、わりと爽やかにアンバーが感じられるので、逆に不思議な感じもする。
やがて3分もすると、薬草&樹脂なアンバー香の下から、パチュリ独特の苦味と黒さ、その上でかすかに白くパウダリーに展開するスミレの香りが出てくる。スミレというよりアイリスを感じさせるイオノンだ。それらがいい感じに主張し合い、中東っぽさはうすれ、柔らかいフロリエンタル風に感じられてくる。
ジョー・マローンといえばコンバイニング。重ねづけ推奨ブランドだけに、香料の厚みとしてはうすい。そして展開も付けてからあまり変化しない。イオノン系でもかなり暗めのウッディよりの香料が使われているように思う。わずかに酸味のあるウードっぽい香料もずっとベース音のように下で響いているので、スミレというよりもパウダリックアンバーといった感じの印象だ。
持続時間は4〜5時間。つけて30分もすると薬草っぽさやパウダリーな感じはうすれてきて、ウード調のベースとスッキリ甘いアンバー香がずっと続いていくイメージ。スミレというほどスミレはなく、バルサミックな香りが強めの作品。これなら35000円で特別シリーズにしなくても黒ボトルのインテンス系に加えてもよかったんじゃないかと個人的には思う。
それでも、この香りをつけていて感じる不思議なリラグゼーションは特筆に値する。この香りに包まれるとき、気持ちがおだやかになり、安らぎを感じる。心に思い浮かぶ風景は、中東の琥珀色の夕暮れ。砂漠の黄土の上に夜のとばりが降り始める。満点の星々が深紫の夜空に音もなくまたたき始める。そんな静寂のクロージングタイムに、今日1日つつがなく終えられたことを感謝したくなるような、おだやかで聖なる香りがする。
夜が来る。今夜も、明日も、よい日であってほしい。暮れゆく空の合間、琥珀色と深紫のグラデーションの間に、人は心の安息を願う一夜の夢を見る。紫の千夜一夜の香りとともに。
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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)について
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