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キリアンのローリングインラブはとても危険な香りだ。深紅のボトルに秘められたジュース。そこにはどんなに濃厚でセクシーな香りが潜んでいるのかと想像すると、たいてい肩すかしをくう。このセンシュアルなレッドボトルに充填されているのは、意外にも、とても穏やかでしっとりとしたクリーミーな香りだ。
ローリングインラブは、最初から最後まで、とてもマイルドなアーモンドミルクの香りがする。それのどこが危険なの?そう思うかもしれない。確かにそうだ。何年か前から飲み物としてもメジャーになった感のある、あのアーモンドミルク。本当にそんな香りがする。ちょっと嗅いでみただけでは。
ラグジュアリーな金メタルキャップをとってローリングインラブをスプレーする。最初にスッと鼻を通るのは、透明でビターな香りだ。すぐにビターアーモンドの香りだとわかる。ただし、このスッと抜ける苦味を嗅ぎ慣れていなければ「あれ、つけたのに何も匂いがしない?」と思うかもしれない。
5秒もしないうちに、コクのあるロースティーなアーモンドの香りがしてくる。それは塩をまぶしたあのアーモンドの匂いそのものだ。ご丁寧に塩味の雰囲気まできちんと再現されている。こんもりナッティーな雰囲気は、色で言うなら茶色。なぜこんなにもロースティーなアーモンド香を再現したのだろう?と疑問に思うほど。
数分後、ほんのわずかチェリーの甘苦い香りが抜けていく。そしてナッツの塩味がうすれ始めると、次第にミルクの香りがオーバーラップしてくる。あふれるほどのミルク。ナッツの茶色いコクに白いミルクがかかり、あたりはアーモンドミルクの淡いベージュ色の気配に包まれる。それは女性の柔肌の色、と言ってもいいかもしれない。ここからがローリングインラブの真骨頂。しっとりしたアーモンドミルクの香りが、どこまでも柔らかく広がってくる。甘さはあまりない。アイリスのパウダリー、ヴァニラのクリーミーも顔をのぞかせてきて、白一色になってくる。そこにほんのわずか、冷たい感じのフローラルのタッチがある。クレジットによればフリージアだろうか。鼻ででかぎ分けられるほどではないけれど。
このしっとり白いアーモンドミルクノートが、3〜6時間ほど、肌の上10cmあたりで続く。ラストはトンカビーンの甘さとホワイトムスクのフローラル感を保ちつつ、白くミルキーな香りのまま消えてゆく。
よほど鼻を近づけないとかぎ取れないほどの淡い香り立ち。最初につけると「ん?キリアンでこんな淡い香りなワケがない。これは偽物では?」と思うほど、他のキリアンより控えめで繊細な印象。本当に深紅のボトルの印象とはかけ離れて感じられる点。それでも。
ローリングインラブは、やはり危険な香りだと思う。なぜなら。
この香水には、エロティックな肉体の交わりを連想させる裏要素が、多分に込められているからだ。
アーモンドミルクの香り。言葉で聞くと心惹かれるが、アーモンドとはそもそも男性器を意味する言葉でもある。そこにミルクノートを寄り添わせた、ということは何を暗喩しているか推して知るべしということだ。男性のミルク、これは確実に裏メッセージとしてある。
さらにキリアンは、今回この香りをリリースするにあたって、しきりにスキンパフュームを作りたかったと言っている。女性の肌の下の匂い。それはこれまでのキリアン香水の打ち出してきた方向性とは真逆だ。これまでは、どちらかというと「これでもか」とばかりに香料をふんだんに取り入れ、濃厚な主張をする作品が多かったが、この作品は意外なほど内省的で裡にこもっている。もっと言うと「主張」とは真逆の「何かを吸いこむような香り方」をするように感じられる。もしも「女性の肌がアーモンドミルクを吸いこむように香る」としたら、それは愛の交わりそのもののイメージだ。
むろん深読みかもしれない。感じ方はそれぞれ異なるはず。ただ、鼻をよほど近づけないと、この香りが感じられないように作っているのは事実。それも計算づくだとすれば、さらに納得がいく。これはつけた人のプライヴェートゾーン、つまり超至近距離に入れる者にしか嗅げない香りなのだろう。その肌に口づけできる者にしか嗅げない香水。
ローリングインラブは、ミルキー、クリーミー、パウダリー、ムスキー、それら官能の多層構造をもつ白いミルフィーユ香水だ。時間が経つにつれ、特に女性の肌の上で、白く美味しくできあがっていく香り。愛し合う者たちだけが確かめ合える秘密の匂い。
真っ赤な唇から漏れる吐息。汗ばんだ肌は塩ナッツの匂い。狂おしい夜のしじまがふけてゆく。そして切ない獣の咆哮。二人はミルクの匂いに包まれ、一つになる。
恋に抱かれて、肉欲にまみれる。愛の中毒、ローリングインラブ。
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