アトリエ・コロン / Mandarine Glaciale 口コミ

突然ですが、セロリはお好きですか？

これに「はい」と即答出来る方だけに是非お勧めしたいザ.セロリな香り。一昔前に料理の◯人という番組が流行った時に、オープニングで男性が手に持った黄色いパプリカを、まるでリンゴのようにシャリッとかじっていた。あれをセロリでやったほどのインパクトがある。

それは体質によって評価が天と地ほど変わる面白い香水だ。海外のレビューでは褒めちぎっているものも多い一方で、私と同じくセロリという意見も多数。好きか嫌いかはっきり分かれて、中間の意見がほぼ皆無なのが面白い。

香水をつけ始めた頃、どなたかの口コミで「◯◯の素晴らしい香りが、私がつけると生姜湯の香りになって残念」とあり印象的だった。その時は珍しいなとしか思わなかったけれど、自分が同じようなことを体験している。今の私は歩くセロリ。

Mandarine Glaciale 直訳は凍ったマンダリン。昔給食に出て小学生に大人気だった冷凍みかんを思い出した。まさかフランスには冷凍みかんはないだろう。

トップは温州蜜柑に似た甘酸っぱいマンダリンオレンジ。それに伴ってほろ苦い香りが。子供の頃悪戯で蜜柑の皮をかじった時、甘いと信じこんでいて苦さにびっくり。その驚きを香りにしたみたいだ。ベルガモット、マンダリン、レモントリオの甘酸っぱさの影で苦くて土っぽい香りがチラチラする。

それが何の香りか探るうちにジンジャーのスパイシーさが加わった。新生姜というよりはヒネショウガを力技で皮ごとゴリゴリすり下ろした感じだ。パンチが効いていて刺激的だが瑞々しさはない。そのジンジャーの下から先程の苦い土っぽい香りがまた時々顔を出す。

さっきから私の嗅覚で感知できる範囲内ギリギリでウロウロしている苦い土っぽさの正体が気になって仕方がない。その謎の香りが植物の茎と葉らしきグリーンな香りと混ざって、何処かで嗅いだ香りにまとまってきた。

うーん、何処かな？

畑だ！野良仕事をしている時に嗅いだ。

母が野菜を育てるのが好きで、私は時々草抜きなどを手伝っていた。そこで絶対嗅いだことがある。

セロリ！収穫したばかりで土がついたままのやつ。

セロリは結構好き。今住んでいるアメリカには日本人じゃ理解できないフレーバーのソーダがあって、セロリ味というものもある。ハマってしまい時々買って飲んでいたが、最近はお目にかかっていない。

でもセロリを香水に入れるなんて大胆。構成を見ると....

トップノート: マンダリン、レモン、ベルガモット
ミドルノート: ジンジャー、ジャスミン、プチグレン
ラストノート: ベチバー、オークモス、アンバー

あれ？セロリは？この中で苦いのはベチバーとオークモス。それがグリーンな香りのプチグレンと混ざったからといってセロリに変身するものか？

気に入ってはいないが気になるので時々つける。その度に絶賛ガチセロリ中に猛烈に眠くなる。→で、寝る。

つけると必ず超爆睡。睡眠という言葉より、むしろ失神、気絶、秒殺、撃沈のほうががふさわしいほど。ベチバーの仕業かな？

アロマの本によると強い鎮静作用のため、ベチバーは車の運転や機械の操縦時にはつけない方がいいようだ。ベチバー自体は他の香水にも入っているはずなのに、どうしてこれに限ってここまで眠くなるのか？確かに使用されている香料の88%が天然で、比較的安価なベチバーは確実に全部天然由来なのだろう。もしかしてドラ◯もんに出てきた、死んだ人さえ眠らせるというさいみん砂を持った砂男のオマケ付き？(知っている人いるのか？)

目が覚めて香水をつけた場所の匂いを嗅ぐと、寝る前の土付きセロリ&ヒネショウガ臭が、柔らかく優しいジャスミン&アンバーの香りにミラクルな進化を遂げている。ジャスミンはだいたいトップかミドルノートで香るのに、ドライダウンでしっかり香るとは一体どういう仕組みなんだろう。

セロリ&ヒネショウガがジャスミン&アンバーに変身する瞬間を絶対に突き止めようと意気込んでつける。しかし毎回眠気に負けて爆睡。結局その瞬間に未だに出会えていない。

それにしても睡眠薬になる香水とは、なんて斬新な。狙ったか狙ってないかは別として。「香水とはいったいなんぞや？」と哲学的に問いかけてくるような摩訶不思議な一品。

これをつけている間は自分のことを「眠れる森の美女」ならぬ「眠れるセロリ畑の美女」だと信じることにした。

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