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クチコミ
自分は100%正しい。間違っているのは相手だ。だから攻撃していい。どこまでも論破してやる。奴は駆逐されて当然だ。
こういう考え方の人が苦手だ。振りかざした正義は、悪と同等かそれ以上に手が悪い。だが残念ながらこの世界には、そんな正義厨がごまんとあふれている。自粛警察どころじゃない。自粛軍隊なみに。
セルジュ・ルタンスの香水をつけていると、ついそんなことを考えてしまう。複雑な香りの向こうで、ルタンスが何を考えてこの香りを創ったのか、どんな皮肉を込めて闇の中で笑っているのかと、裏ばかり読もうとしてしまう。だから光と透明感あふれるコレクション・ポリテスが出た時は本当に驚いた。
え?ルタンスが透明ボトル?爽やかな香り!?なにそれ!絶対何か裏メッセージがあるに違いない!彼がそんな普通なことをするはずがないんだ!うわー!!!!←シンジ君!
中でもいったん闇に葬られた明るく爽やかな香り、フルールドシトロニエ様が、ここぞとばかりに光の下へご帰還あそばされたことについては、本当に面食らった。「レモンの木の花」。この香水はその名のごとく、明るく爽やかでフレッシュな香りがする。ルタンスの異世界ダークロマネスクのイメージとはほぼ真逆といっていいくらいに。
透明で波模様が美しいボトルからフルールドシトロニエをプッシュする。つけた瞬間、レモンとネロリの香りが同時に広がる。ほんのり甘くてさっぱりしたレモンフローラル香といった感じ。酸味があまりなく豊かに広がるレモンの香りに、ふんわり甘いオレンジフラワーの香りが寄り添っている。思わず口中に唾液があふれそうになる。知らずにつけたら絶対にルタンスの香水とは思わないほど、シャイニーかつフレッシュネス。
つけて3分すると、その下からスッキリグリーンな香りがほんのり出てくる。オレンジの葉の香り、プチグレンのよう。甘酸っぱいレモンパイの隣にアイスミントグリーンティーを添えたよう。ミントの清涼感はないけれど、次第に葉のグリーンとうす茶色いウッディが感じられるようになる。
このミックスのまま香りは落ち着いてミドルとなる。ソプラノは黄色いレモン、アルトが白いネロリ、テノールはシャープなグリーン、バリトンはうす茶色のウッディ。それぞれの音域を生かした美しいカルテットを聞く。
後半は、ホワイトムスクのアイロンを熱したようなソーピーなタッチが出てくるようになり、付けて3〜4時間ほどでドライダウン。全体的にルタンスの香水にしてはスパイスのスの字もなく、明るくライトなオーデコロン系の香りと言っていいように思う。はいはい、いつもダークでデンジャラスな香りばかりじゃないんですよ、やろうと思えばこんな普通のクリーンな香りだって創れるんですよと言いたげなほど。
あ。そういうことか。
コレクション・ポリテス。この「ポリテス」という仏語は、直訳すると「礼儀」「礼儀正しさ」という意味で、「礼儀のコレクション?なんだそれ」とずっと思っていたけど、何となく察した。この言葉にはやはり裏の意味がある。それは
「行儀よく。同じことをする。お返しをする。」という皮肉めいたニュアンスだ。
「ルタンス暗い香りばかりだって?はいはい。お行儀のいい明るい香水だって作れますよ。他と同じようなフツーのやつね。はいどーぞつまんないけど(冷笑)」という彼なりの仕返しだ。
そう呟いて真っ暗な部屋でニヤニヤ笑っている闇の信奉者の青白い顔が思い浮かんで仕方ない。そうだ。そうに決まってる!うわー!!!!。←シンジ!!
彼が纏う心の闇は、これまでのノワールコレクションや他のコレクションで、もう十分に表現されている。だが世界は光と闇の両方で成り立っている。明と暗、美しさと醜さ、正義と悪。ルタンスはあえて光輝くフレグランスを創ることで、自身の闇をもう一段階引き立たせようとしたのではないか。
世界はまばゆい光にあふれてる。わずかな闇(悪)があるから光(正義)が一層ひき立つという言葉もある。ただルタンスの哲学はきっと真逆だ。
世界はもともと闇だ。わずかな光こそが闇を一層引き立たたせるのだと。そんなアンチテーゼを感じる。
確かにまぶし過ぎて影のない場所は辛いな。逃げ場がない。世間はいつもサーチライトを照らして「仮想敵」を探し続けてる。シトロニエのレモン香を感じながら思う。
「光」の対義語は確かに「闇」だろう。ただ「正義」の反対語は「悪」じゃない。「正義」の反対にあるのは「別の人の正義」だ。だから世界中、戦争と争いがなくならないんだろう。
レモンの木を見上げる。緑の葉と果実の黄色が、青空の前で揺れている。
「きれいだね」「いい香りだね」
世界中の人がそう笑いあえたらいい。
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