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「ソワール(soir)」は日本語で一番近い訳で「夕方」。このフレグランスを解説しているページでよく「夜」という表記が目立ちますが、夜なら「nuit」なはず。ゲランの「夜間飛行」にもあるように。
「夕方」はとてもあいまいな刻。気温と湿度と風が変わり、少しだけ時間がよどんだように流れる物憂げな刻。だから「夕方」と「夜」とでは、印象も連想もかなり異なるはずだ。
ブルガリ・プールオム・ソワール(ブルガリ公式サイトより)
香調:ウッディ・アンバー
トップ:ダージリンティー、パピルスウッド
ベース:アンバー、ムスク
トップにベルガモットをクレジットしているとする情報が多いが、確かにすっとした明るい感じが最初に感じられるので、ほんのり入っているかも知れない。そして、ダージリンティーの香りも、最初にふわっと透明感漂う落ち着いた低めの香りが漂う程度で、さほど持続しない。むしろ。
すぐに出てくるミドルの、「年季の入った本からにじみ出るような乾いた紙の香り」。これが強い。
たぶん調香師ジャック・キャバリエがこの作品で最も伝えたかった香り、それがミドルにクレジットされている「パピルスウッド」だと思う。
この香りについてかなり調べてみたが、パピルスウッドという表記ではなかなか見つからず、いわゆる昔習った(笑)エジプト文明の世界最初の紙「パピルス」の原料となったススキに似た植物、パピルスから抽出したものと考えてよいのかと。人によっては、「少し甘い木の香り」「桜餅のような香り」「鉛筆を削ったときのような香り」と評しているようだけれど、どれもわかる。そして、俺の肌にのせてふわりと立ち上った感じは、「少しほこりをかぶったような、暗めの場所に置かれた本の香り」という印象。
この印象が正しいかどうか、さらに突き詰めようと、同じくミドルにパピルスウッドを入れているラルチザン・パフュームの「タンブクトゥ」と、この「プールオム・ソワール」を左右の手首につけて比較したところ、トップこそ違うけれど、ミドルでふわあっと広がってくるウッディ香の高さはほとんど同じで、香りの質も似ている系統だと感じた。やはり、この鉛筆を削ったような、それでいて優しげで乾いた紙のような匂いのするような香りがパピルスウッドなのだろう。タンブクトゥでは、それがスモーキーに展開して、やがてベースとなるパチュリやベチバー、ベンゾインの残香性に守られながら、ウッディのままドライダウンしていく感じだが、こちらは、ミドル以降、すっと表情が変わる。
つけて1時間もする頃には、さっきまで乾いた感じマックスだった紙っぽい香りが、優しい石けんのような香りをともなって甘く変わり始める。すっと、アンバーやムスクの優しい甘さが下からにじみ出てきた感じ。ここに来て初めて、「あ、これぞブルガリ・プール・オムの優しいムスクづかいの継承」と納得。同時に、シーケービーの静かでちょっと冷たげな、ラベンダー石けん調の香りに似た印象も。
「洗練された官能的な夜の香り」
このフレグランスを表現する宣伝文句に、必ずといっていいほど、そんな言葉がちらつくが、このラストあたりまできて初めて、その言葉もまんざら嘘じゃないなと納得。
この甘くなるラストは少し誘惑している。
さっきまでの静謐な、古びた洋館の一室で西日にあたって乾いた紙の芳香を思わせるような、落ち着きと知性を感じさせるたたずまいから、この香水は、甘くパウダリーで清潔な感じに変わっていく。それはやはり、夕刻から時がたち、すっかり夜のとばりがおりて、あたりを星々の瞬く風景に染め変えてしまったかのよう。
1日の終わり。仕事を終えてしおりをはさみ、本を閉じる音が聞こえる。インクの匂い、長い影を斜めに作りながら窓から差す残光に、じんわりと温められてほのかに香り立つ木のデスク。太陽は沈み、夕暮れのグラデーションがオレンジ色から藍色に変わり始める。さあ、ここからが1日の残り半分の始まり。部屋のドアを後ろ手でしめて、オフィスを後にした瞬間、暗く長い廊下に革靴の音が響き始める。
そんなときに、自分から香っているのが似つかわしい。それが、ブルガリ・プールオム・ソワール。男でも女でも。デイタイムから、イブニング〜ナイトへの切り替えスイッチ。それはとてもはかなげな香り。
秋とかけて夕刻と解く。その心は、年を重ねるほどに、心にしみいるセピア色のとき。
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