イヴ・サンローラン / ロム イヴ・サンローラン オーデトワレ 口コミ

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doggyhonzawaさん
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4購入品

2018/9/15 16:28:48

休日の朝。スケジュールは空白。何年ぶりだろう、こんな静かな朝は。コーヒーでも淹れようかと思いながら、ふと手を止める。思えばこの30年ずっと走りっぱなしだった。

20代は仕事とラジオのパーソナリティー、バンドのライブに明け暮れた。体が3つなければ足りないほど動いていた。そのくせどれも中途半端で投げやりで、命令されることを嫌い、とがりまくって毎日夜明けまで遊んでいた。つけていた香水は濃厚なものばかり。イラついていた時代。

30代は妻の出産、子育て、家の購入とイベントが目白押しで、息つくひまもなく走っていた。家事も育児も仕事も全てこなすのは本当に至難だった。妻は化粧を落とす時間すらままならなかった。自分は幼子を抱くために香水もタバコもやめ、ただひたすら働いた。疾風怒濤、疲れていた時代。

そして40代。気がつくと、子どもたちは親の手を離れ、食事の時間もバラバラになった。少しずつ読書をしたり、一人で映画を見たりする時間が生まれた。そして昔から好きだった香水についてあれこれ調べたり、再び集めたりする時間がやっと戻ってきた。

だから若い子から見たら「よくもまあいい年のジジイが香水なんか集めて」って思うだろうけど、そんなことはノットユアビジネス、大きなお世話だ。俺は30年かかってやっと手に入れた今という時間が一番楽しいんだから。

ここに1本のありふれたフゼアのメンズ香水がある。イブサンローランのロム・オードトワレだ。今日久々に何も予定がない休日だったので、朝からこの香りを分析して楽しんでいた。

トップ。華やかなバブルの頃を思わせる香り立ちがある。ほんのりスパイシーなペッパーとカルダモン、そしてシトラス。よくある出だし。20代の頃、街角の黒服の男達から香っていた派手なフゼアのイントロ。ちょうどシャネルのエゴプラのような。

5分ほどしてミドル。瓜系の透明感あるエアリーな香りが全体を柔らかくし始める。そこにスパイスの余韻とバイオレットリーフの暗いシャープさが交わる。30代の頃、ユニセックスがもてはやされた頃にかいだ香りだ。あの頃大流行したCKワンのようなシプレー系ミドル。

やがて、ジンジャーのじわりとした辛みが強くなってくるとラストに近くなる。香りはあたたかみを増してきて、ナッツのこんもり感も出てくる。トンカビーンのふくよかさだ。ムスクで終わらず、シダーやジンジャーで消えていくエンディングは、ちょうど40代の頃に多く出たものだ。あの頃よくかいだディオールオムスポーツやルタンスの「ジンジャーが香る午後5時」を思わせる。

そうか。イブサンローランのロムはこの30年間を凝縮しているのか。

トム・フォードが去ったイブサンローランを再び盛り上げるために、ブランドは有能な調香師を3人雇ってこの「ザ・男」(笑)と名付けた作品の創造を託した。サンローラン起死回生のメンズ香を創るために招集された調香師は次の3人。

アマリージュ、ピュアプワゾン、フレデリック・マルのカーナルフラワーなどを手がけたフローラルの鬼才、ドミニク・ロピオン。

メンズの名香、ギ・ラロッシュのドラッカーノワールを手がけ、スパイスやレザー香遣いに定評があるピエール・ワルニー。

ジョー・マローンのマスターパフューマーとして透明感ある優しいフローラルを数多くリリースし、シャッセ・オ・パピヨンなども手がけたアン・フリッポ。

「3人寄れば文殊の知恵」とばかりに腕利きを集めて創られたサンローランのロム・オードトワレ。この作品はいい意味で彼らの得意技が全て封印され、穏やかでどこにでもありそうな優しい香りに仕上がっている。確かにこの手の柔らかいフゼアは付けやすく汎用性も高い。そしてどうやら女性が好む男性の香りとしてかなりポイントが高いらしい。

実際、シトラスの爽やかさがあり、優しいスパイスが男らしさ、低音のフローラルが柔軟性を表し、ホットなジンジャーは情熱、ふくよかなトンカビーンは包容力、シダーやベチバーのウッディなラストは、何事にも動じない揺るぎなさを提案している。

そしてロムは、それらの特徴がマイルドに溶け合い、際だったノートをあえて見せない香りだ。そう思う。

今日は何をしようか。ここ何年もなかった休日の自由な時間。自分でコーヒーを淹れる代わりに、少し遠くのカフェまで足を伸ばしてみようか。

夫でもなく父でもない。名刺もいらない。どこにもギヤを入れてない日に、この静かで優しい香りは似合うのかもしれない。

休日の朝、高い青空。絵筆で流したようなすっきりした雲。心地よい朝の空気を胸いっぱいに吸って自転車に乗って出かけよう。

朝の光の中、こぎ出すペダル。ロムの香りが風にゆったりたなびき始めた。

  • 朝のカフェ by doggyhonzawaさん
  • ロム オードトワレ by doggyhonzawaさん
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