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メシャン・ルー。いじわるオオカミ。とてもポエティックなネーミングの香水だ。
この香水はご存じグリム童話の「赤ずきん」の世界をイメージして創られたという。暗い森の中、おばあさんの家にお菓子を届けるおつかいに向かった赤ずきんはオオカミに出会って、というあれ。調香師ベルトラン・ドゥショフールは、赤ずきんのバスケットに入ったお菓子の香りからインスピレーションを広げた。そして森の香り。さらにはおばあさんを丸のみにして赤ずきんを待ち受けたオオカミはどう表現しようとしたのか?
メシャンルーをスプレーする。その瞬間、透明感あるエーテルの匂い、その背後からナッツ系のコクのある香り、そして鼻がムズムズするようなペッパーのドライな香りが追いかけてくる。まるでうす霧の中、ナッツクリームのお菓子をバスケットに入れた赤ずきんが、おばあさんの家の前に立った瞬間のよう。あれ?なんだかいつもと違うピリっとした辛い匂いがする。まさに物語のプロローグ。
3分後、香りは次第にペッパーやスパイスが主張を強くしてくる。ドライで熱があって、どこか挑むような香りに変わる。おばあさんのふりをして目を細めた狼が、眼光だけは鋭いまま赤ずきんを見つめている雰囲気。下の方ではコクのあるナッツ風パウダリー香が支えている。このビリビリペッパー感とやや甘みある香ばしい木の実の香りが拮抗しているミドル。そして、調香師ベルトラン・ドゥショフールが、ラルチザンで多用した独特の薬湯っぽいようなセロリのような苦味もベースに流れている。
ナッツのお菓子の匂いが赤ずきんなら、ワイルドなペッパーの香りはオオカミの象徴。ミドルではこのナッツとペッパーが3:7ぐらいの割合で主張してくる。つまり、狼の方がイニシアチブをとっているイメージだ。セロリっぽい香りはさながら深い森の針葉樹の葉。その深いグリーンの背景。
やがて30分ほどすると、ペッパーのムズムズ感は薄まり、ほんのり甘い穀物っぽい香りが感じられるようになる。クレジットを見ると、ヘーゼルナッツやマロンのようだ。ややスモーキーでホクホクしたサツマイモのような香りがしてくる。木の実系の香りがこんもりと漂い、ピリピリした狼はどこかへ追いやられたよう。穏やかなエンディングを迎える。
持続時間は思ったよりも短い。体温高めの自分の肌では2〜3時間。時折ペッパー&マロンの香りに不意にベルガモットの爽やかさが感じられたり、シダーっぽいウッディな香りがして森っぽさが感じられたり。
アニマル系香料は特に使っていないのに、スパイシーなペッパーとナッツやマロン、セロリ系グリーンのミックスで、どこか灰褐色の動物の毛皮の匂いを連想させる不思議なコンポジション。シャープな香りとまるい香りのコントラスト、あるいはスパイスとナッツの対比があって面白い。興味深いのはこの森の中には一片のフローラルも感じられないこと。シトラスでもフローラルでもオリエンタルでもない。系統的にはグルマンの範疇のようだが、とても冒険的なスパイシー・ウッディっぽい香り。100mlで2万円前後。ネットではかなり安価なショップも。
「赤ずきん」の物語は、もともとあった伝承をもとに1700年代にペロー童話で語られたとされている。こちらのあらすじはかなりおどろおどろ系で、おばあさんと赤ずきんがオオカミに食べられてそのまま物語が終わるなど、他にも子どもには聞かせにくい内容があるようだ。いじわるオオカミ、なんて可愛いものではない。「本当はこわい赤ずきんちゃん」そのもの。
その約100年後、1812年に完成したグリム童話では、おばあさんと赤ずきんを丸呑みにしたオオカミが昼寝をした際に、猟師が登場してその腹を割いて2人を助け、代わりに腹に石を詰めてこらしめるという救いの場面が挿入されている。「森に入ったら危険。おつかいで寄り道したらオオカミに食べられるからダメ!」そんな教訓もこのグリム童話の頃に後付けされたものらしい。
狼は狼でも、どこか間の抜けたグリム童話のいじわるオオカミの方が子ども心にはちょうどいい。オオカミさんは赤ずきんちゃんにいじわるをしたから罰があたってしまいました、そういうことにしておこう。
グリム童話では、おばあさんに変装したオオカミにどこか違和感を感じた赤ずきんが何度も問いかける場面がある。「その耳は?その目は?その大きなお口は何のためにあるの?」もしも赤ずきんが鼻についてたずねたら、その後のストーリーはまた別のものになったろうか。
「おばあちゃんのお鼻はどうしてそんなに長くて大きいの?」
「それはね、お前のいい匂いをもっとクンクン嗅ぐためさ。」
「へー、なんか犬みたい。」
「イッヌ!…あんたってなんか、いじわるだね。」
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