セルジュ・ルタンス / セルジュノワール(Serge noire) 口コミ

ルタンス自身の名前を冠したこの香水。彼が納得する香りを創り出すために、10年を要したそうです。
爆弾のようなスパイス。灰のようなパウダリー。むせ返る程に煙たく、喫煙者が長年着続けた背広に染み付いた煙草の匂いのような香り方のする、猛烈にスモーキーな香りです。
クセの強い香りだらけのグラッドシエルシリーズの１つです。

セルジュ・ルタンスは死とか秘密とか、厨二病っぽいテーマで、なんでも作りがちって傾向があるんですが、このセルジュノワールも、ルタンスの厨二心が詰まった香水になります。

「お焼香っぽい」「葬式の香りっぽい」と、みなさまが仰る通りの香調で、丁字（クローブ）や小茴香（クミン）、桂皮（シナモン）、かっ香（パチョリ）等々の、とにかくお香の材料がぎっしり詰まっています。それをウッディ(黒檀とからしいです)とアンバー香でまとめ上げているのですから、そりゃ寺っぽくならないわけがありません。

そんな抹香臭い材料がベースになった香りという点と、クミン調の体臭のような香りという点から、好き嫌いがはっきりと別れるタイプの香水です。
FRAGRANTICAのレビューでも、この香りを崇めるように大好きと言う人と、大っ嫌い、耐えられないと言う人ではっきり分かれております。（「腐った魚乗っけてるみたい！」と言っている人すらいました。どんな魚だ。）

そして、葬式っぽく感じるのは日本だからかな？と思いきや、西洋圏でも「セルジュノワールはお葬式の香り」「荘厳な死の匂い」という評価が見受けられます。どこの国でも、故人を送る香りは同じなんですね。

トップのスパイスの爆弾のような香りは、ミドルでウッディ香がぼんやりと包み込みながらシナモン調に落ち着いていきます。そしてラストにかけてシナモンとアンバーのじんわりとした香りに変化する設計です。トップからラストまで一貫して、スモーキーで灰がかったようなトーンで包まれています。
FRAGRANTICAでは「ミドル以降はクリスマスのような香り」という意見もちらほらです。シナモンやスパイスの香りが、ホットワインやシュトーレンのような香りをイメージするんでしょう。

ギョッとするくらいのスパイシーな香りがお好きな方だったら、この香りの楽しみ方がわかるのでは。
万人ウケする香りでは無いと思いますが、自分の肌から香る、甘くて暖かい、粉っぽいスパイスの香りは、本当に好みです。多分自分が体温が高いこともあり、ミドル以降かなり甘く香り立ちます。

もともと自分はスパイシー系の香水が好きで、コムデギャルソン オーデパルファムとホワイトを10年近くメイン香水に使っていたのですが、ちょっと秋冬に使うには寒い匂いだなと思い続けておりました。セルジュノワールは、秋冬の肌寒い季節にぴったりなので、秋冬のスパイス香はこれで決まりだなと。

ちなみに、この香り、ルカトゥリンの「世界香水ガイド2」では最低評価の星1つ。
きっと香水としては評価できないような代物なんだと思います。
でも、この香りを好きな人にとっては最高に、嫌いな人にとっては最低に、記憶に残り、気になり続けてしまう香水です。


ちなみに星が5つの理由は、全ての人にオススメしたい最高の香り「フェミニテデュボア」が星6つだから。全ての人にはオススメできませんので、星1つ減らしました。

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