セルジュ・ルタンス / ダチュラノワール(Datura noir) 口コミ

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doggyhonzawaさん
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2016/5/14 21:02:17

ダチュラ・ノワール、それは何かを殺める香り。

夏の夕暮れどき、静かに花弁を開き始め、真夜中に濃厚な甘い香りを漂わせる白い花ダチュラ。ダチュラ・ノワールは、真夜中の秘密。禁断の扉の向こう、ブラック・ベルベットの夜の底へいざなう妖艶な白いドレス。

ダチュラ・ノワールは、2001年、セルジュ・ルタンスから発売された、クリストファー・シェルドレイク調香のオード・パルファムだ。50mlで10000円前後。

この作品でイメージされているダチュラは、夏から初秋にかけて、夕方から咲き、明け方には花を閉じるという、夜咲きの花。ナス科の植物で、花の形もアサガオなどに似ていることから、日本では古くから「チョウセンアサガオ」とも呼ばれている。根・茎・葉・花など、あらゆる部位にアルカロイド系の猛毒をもつ植物として有名だ。その近種はさまざまあるが、どれも幻覚を引き起こすなどの強力な作用をもつ。

「夜顔」ダチュラ。それは、かぐわしく危険な香りで受粉蛾を引き寄せる魔性の花。

そんなダチュラ・ノワールのトップは、強烈なフローラル・エクスプロージョンで花開く。一瞬のキンモクセイ、高いところで、そのやや金属的でふくよかな香りが漂い、中音でヘリオトロープの甘く苦い香りが広がる。同時にアメリカンチェリー様の暗くよどんだ甘苦いフルーティーさが重なる。シトラス系の爽やかな雰囲気はいっさい感じられず、何かしら人工的な素材、塩化ビニールを柔らかくするために入れる可塑剤のツンとした匂いのようなものがきついトップ。

この洗剤っぽい匂いが強くて、スプレー後に何度か鼻を近づけていると、自分は軽い頭痛を感じてしまうことが多い。このトップの香りを受け入れられるかどうかは、好きか嫌いかの分かれ目だろう。ヘリオトロープの香料の苦みかも知れない。

やがて、5分もすると、軽いめまいを催すようなビニルっぽい苦みは静かに消失していき、ココナッツのクリーミーさをまとったチュベローズの妖しげな香りが広がってくる。甘く気だるい、そして影のある月下香の香り。花粉の粉っぽさや、花の香りの奥底に感じられる何かしらアニマリックな風味も醸し出しながら。

そこに、アーモンドのコクのある苦みが混じり、さながら杏仁豆腐の香りの元となる杏仁霜の雰囲気が強くなってくる。杏仁豆腐を作る際は、杏仁霜の代用品としてアーモンドパウダーを使用することも多いから、さもありなんといった感じだ。ディオールのヒプノティック・プワゾンなどが好きな方なら、このへんの香りは好みの系統かも知れない。アーモンド&トンカビーン系の、ちょっと胸苦しいような独特の甘みと香ばしさは、香りがミドルに入って落ち着いたことを知らせてくれる。

あとは、クリーミーなチュベローズ&ジャスミン様の雰囲気の香りがそのまま落ち着いて、約4〜6時間ほど香る。ただトップのフローラルの押し出し感からは想像できないが、ミドルからはわりにスッキリした香り立ちで、濃厚さはなりをひそめていく印象だ。次第に下の方から、ムスクっぽい透明な雰囲気が立ち上ってくるようになる。

ラストは、高級石鹸を思わせるムスキーな香りに変わる。ほんのりツンとしていて甘め。このあたりが、ダチュラの花の濃厚な香りを表現しているようにも感じられる。そして、最後の最後にわずかだが、キャラメリゼしたような焦げた感じのヴァニラっぽさが顔をのぞかせる。灼けた肌の匂いと間違えそうな香りだ。それがソーピーなムスクと相まって、清潔な雰囲気で消えていく。さながら、夜明けの光に昨夜の秘密を暴かれる前に、真夜中の出来事にベールをかけて、何事もなかったかのようにふるまうような、穏やかなムスクとヴァニラでドライダウン。

別名デビルズ・トランペット、男を幻惑する甘い麻薬花、ダチュラ。退廃的でエキゾティックな香り。人々は古来より、この花のもつアルカロイドの作用により、強烈な幻覚を見続けてきたのだろう。夕べに花開き、その蜜の香をまき散らし、あまたの蝶や蛾を誘引し、虜にする夜の貴婦人。官能的でありながら、誰もが触れられないほどの強烈な毒を内面に黒く咲き散らかす女性。秘めやかな夜のベールのもと、夜目にも白いその天幕のドレープの下、今宵も繰り広げられる謎めいた儀式。それは、誰にも言えない欲望の花開く夜。

ダチュラ・ノワール、それは、何かを殺める香り。その蜜恋しさに集まり、金の鱗粉を闇に散らす毒蛾たちの群れ。愛憎と嫉妬とせん妄が、狂おしい夜の営みとともに紡がれてゆく。そのかすかな羽音が消える頃、命を落としたのはだれ?

私をもっと見て。でも、決して触れないで。

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