セルジュ・ルタンス / シェルギイ(Chergui) 口コミ

うーん草っぽい。かさかさ音のするドライな草っぽさで、潜りこんで子牛になった気分。
寝転んでまどろみを誘われる。太陽に干してあった部分が甘くて、うっとりする。

朝露がすべるように葉へ沁みていくアンバー。
少し遠くで火のついた煙草。苦い吸殻をかみ締める記憶。
わたしの肌ではお花はあんまり出ないです、パウダリーに転んだ時のアイリスくらい。

ビターな包装紙の中に、スズラン調のおとなしいフローラルがいます。
でもそう長くは続かないです。

チェリーレザー。ハニーレザー。
バニラ。バニラ。
香りのダンス。踏んだステップをポイントで感じる、独立しあった育つ途中のシガーリーフとインセンス。
体を包んで後半戦の空気を掌握しようと座り込む、緩い弱いサンダルウッド。

サハラの焼けた砂を巻き上げて走る灼熱風の名前。シェルギー。

これかなり以前のものだけど、あまり個性は変わらないな、と思います。
この香水そのものに、元々一日で表現されてる時間の経過があるせいかもしれない。
容易く過去を遡れる不思議な作用が逆打ちして、劣化を鈍らせてるのかも。

むしろやわらかいシトラスが早々に落ちて、ウッドノートがくっきりと出て、
たばこのリーフと置き去りにされてたヘイフラワーの燻ぶりが増して
妙に面白い古めかしさが癖になります。

排外と情熱が混在し、感情の形でスタイルを相手に届かせるものもあるルタンスのラインの中で、間口の広いクラシカルな1本。
単に自分が好きだから、そう感じるのかもです。

どろんと酔いつぶれて眠った、次の日のシャツみたいな匂い？
あれそれだと男の人っぽいのかな。
ヘビースモーカーのかたに煙草って思う？と聞いたら全否定されました。
煙草成分なんてゼロだって笑われました。ただの甘ったるフルーティって。

でも熟成シュガリー＆スモーキーの輪郭に遅くまで苦味があります。
コーヒー豆のチョココーティングみたいな、素敵な大人っぽさ。いい香り。

最後濃厚なブルボンバニラのサンドウエハースが、ぽこんと手首に乗ってるみたいになります。
ハニーになかなか行かなくて、こんなにもデザートなベンゾインが長く出るの珍しいな。


2005年、最近だとココノワールとか手がけてたいつものクリストファー・シェルドレイク調香、50mlフランス製。
あまり年齢の低いかたや、可愛らしい女性をイメージできないです。
でもメンズ要素足すことでぐんとフェミニンになれるタイプの力強い女性には、きっと有効です。

照れがなく、とても長持ち。
かなりマルーンに着色されてて肌にも残るから、香りもしっかりだしプッシュしたらペーパーでオフ、が丁度いいと思います。

趣味が狭くてお酒も煙草もしないので、偉そうに言ったけどコーヒーもそんな味とか分からないので
香りが何かを嗜む模擬行為として、人生を豊かにしてくれるのならうれしいです。

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