ジャンパトー / ジョイ 口コミ

1929年世界恐慌が荒れ狂った翌年、
ジャン・パトゥの『JOY』は発表された。
「世界で最も高価な香水」という
挑発的な宣伝文句とともに。

一つの賭けだった。危険な冒険だった。
世界恐慌の翌年にそんな高価な香水が
売れるのか？結果は誰もが知っている。
大成功だ。以後八十年以上経っても
全世界の女性に愛されているのがその証拠だ。

ただ「世界一高価な香水」という称号は明け渡した。
ニッチブランドが台頭し乱立し始め、
これでもかと言うほど高価な香水が登場したためである。
もっともパトゥ自身から『1000』という
ジョイを上回る価格の香水が発表されているが。

だがジョイの価値は揺らがない。
最も贅沢な香水として今も玉座に君臨している。
旧約聖書「列王記 上」に記されている
あのシバの女王のように。

香りの構成は非常に単純だという。
最高品質のブルガリア産ローズと
グラース産ジャスミンが主で、若干の
イランイランやチュベローズ等が
加えられているだけだと。
それだけでこれほど豊潤なフローラル・ブーケが
表現できるのだろうか。香りの神秘、妙技である。

トップが落ち着けば後はローズとジャスミンの
二重唱である。レント、あるいはアダージョかと
思えばアレグロやプレストになったり、
極めて素晴らしい技巧的な二重唱。
ローズとジャスミンの溶け合いは天国のようで
まったく乱れがない。その名の通り「喜び」だ。

今この瞬間も世界中で喜びが歌い上げられている。
そう考えると奇蹟のようではないか。

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