ジャンパトー / ジョイ 口コミ

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doggyhonzawaさん
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7購入品

2017/12/2 10:21:06

かつて「世界一高価な香水」「香水の女王」と呼ばれ、稀少な花の精油をふんだんに使用した最高に贅沢な香り。それがジャン・パトゥのJOYだ。

1929年世界恐慌の年に発売され、今なお世界中の女性に「歓喜」を振りまくJOY。このレビューはオーデパルファンのJOY、かつてオーデ・ジョイだったものだ。処方はパルファムと似ているものの、印象的に異なる部分はある。ではJOYのEDPは、一体どんな香りだろうか。

豪奢なガラスボトルは、アールデコ建築家ルイ・シューによる美しく落ち着いたデザイン。キャップもラベルも液色も金色で、ゴージャスこの上ない。そんなボトルから1プッシュすると。

トップ。花々の香りにきらめきのヴェールを与えるアルデハイドの香りが一気に拡散する。一瞬、シャネルの5番に似ていると感じるクラシカルな開幕。ツンとするようで、けれど花々が朝露に濡れたような雰囲気を感じさせるインパクトのあるオープニング。

2分後、かなり強いジャスミンの香りがしてくる。超濃厚。同時にやや甘いアニマリックな匂いが感じられてくる。一歩間違うと、し尿や体臭を思わせるインドールの匂い。インドールはどんなジャスミンにも含まれていているが、特に多く含まれているのはグラース産のジャスミンだ。金塊の2倍の額で取り引きされるという高濃度インドールを含むグラース産ジャスミン。それは世界のどのジャスミンよりも人の嗅覚に潜在的に働きかけ、リッチでフルーティーながら強く官能を呼び覚ますという。その濃縮されたエッセンスが、これでもかというくらい主張してくる。くらくらするほどに。

ほどなく、濃厚なインドールジャスミンの香りに他の花々のニュアンスが重なってくる。ユリの花粉のようなグリーンな苦み、チュベローズの妖しい華やかさ。さらにイランイランの蠱惑的な香りも感じられ、ホワイトフラワーの濃密な饗宴となる。これがジャン・パトゥの「花」の香り。まるで生花のエッセンスを凝縮したかのような強い出力に驚く。

さらに10分ほどすると、ホワイトフラワーブーケの陰から静かにクールフラワーノート、ローズの香りが感じられてくる。クレジットによると、こちらも稀少なグラース産ローズ・ドゥ・メ。このセンティフォリア・ローズの爽やかな香りが、ふわふわと垣間見られるようになる。ジャスミンが「私を見て。感じて。」と強く主張してくるのに対し、このスッキリした青みのあるローズは、物陰から時折そのピンクのドレスの一部をちらちらと見せるような現れ方だ。かつて中世の時代、ヨーロッパではジャスミンは娼婦の香り、ローズは貴婦人の香りとされていたが、強い誘惑の香りの後にこんなにも清楚で柔らかいローズが感じられると、逆に心が囚われてしまう。

このミドル後半の香りの変化はとても美しい。ジャスミンがデクレッシェンドしていくにつれ、わずかにハニーのような甘みを伴ったローズ香がムスクのソーピーさと溶けあい、高級な薔薇石鹸の香りになって人肌に清潔さをしたためていく。ラストはこのクレオパトラが愛したというローズオイルとムスクのミックスでフェードアウト。EDPながら時間は短めだ。体温高めの自分の肌で3〜4時間くらい。

全体的にトップのアルデヒドの拡散から、ミドル前半のインドールジャスミンの濃厚な爆発、そして、ミドル後半からラストにかけての美しくつつましいローズ石鹸の香り、という黄金ピラミッド的展開の名香。過剰投与されているのはジャスミンで、しかもそこらの物とははっきり異なるクオリティだ。ただ、それが好きかどうかは別問題。全体の雰囲気はクラシカルだし、主張も強い。ライトでフルーティーな花の香りが好まれている今の時代には、敬遠する向きもあるだろう。

それでもこのJOYが見せてくれる女性らしさ、その優雅な柔らかさは、特筆すべきものだ。ジャスミンもローズもチュベローズも、付けるたびに出てくる花の色や香り立ちが異なっていておもしろい。1929年、世界恐慌によりこの天上に絶望と不安という暗雲が立ちこめた時、JOYはその黒雲を突き抜ける一条の金色の光のごとく世界を席巻した。まさに歓喜という名の香りで世界の色を塗り変えたのだ。

バラの花のクールで高貴な香りをかぐとき、ジャスミンのふくよかで濃厚な香りを感じるとき、女性は知らず知らず優しい表情になる人が多いという。女性はいつの時代でも華で、そしてどんな暗い時代でも花の香りに包まれていてほしい。それはきっと世界全体が見る夢だ。

ジャン・パトゥがJOYのボトルに詰めたのは、1万本のジャスミンと336本のローズ・ドゥ・メ。小悪魔の悦びと天使の歓び、そして、女性の永遠の喜び。

  • バラと女性 by doggyhonzawaさん
  • JOY オーデパルファン by doggyhonzawaさん
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